都会の喧騒を離れ、静かに時を刻む地方の「空きスペース」がいま、劇的な変化を遂げていることをご存知でしょうか。空き駐車場や民泊で注目された「シェアリングエコノミー」は、今や自治体とスタートアップが手を取り合い、地域の深刻な課題を解決する強力な武器となっています。
シェアリングエコノミーとは、個人や組織が所有するモノ、場所、スキルなどを、インターネットを介して他者と共有(シェア)する仕組みのことです。2019年10月29日現在、人口減少に悩む自治体がこの波に乗り、新たな活路を見出し始めています。
ノスタルジックな廃校が全国からファンを呼ぶ撮影拠点へ
埼玉県横瀬町にある「旧芦ケ久保小学校」は、その象徴的な成功例です。2008年に閉校したこの木造校舎は、かつては年間10回も利用されない場所でした。しかし、空間シェアの先駆者「スペースマーケット」と連携したことで、状況は一変します。
教室に残る机や黒板といったレトロな風景が、アニメやゲームの世界観に浸りたい「コスプレーヤー」たちの心を掴みました。現在では年間約100件もの貸出実績を誇り、平日3万円、休日4.5万円という価格設定ながら、全国から熱心なファンが訪れる聖地となっています。
SNSでも「エモすぎる写真が撮れる!」「自治体が公認しているから安心して撮影に没頭できる」と大きな反響を呼んでいます。ただ場所を貸すだけでなく、ターゲットを絞った集客戦略が、眠っていた地域の資産を輝かせた好例と言えるでしょう。
在宅ワークの壁を突破!主婦のスキルを地域でシェアする
一方、奈良市では「場所」ではなく「働く機会」のシェアが進んでいます。地方では子育てと両立できる仕事が少ないという課題がありますが、市はクラウドソーシング大手「ランサーズ」と協力し、在宅ライターを育成する「なららワーク」を展開しています。
クラウドソーシングとは、企業がネットを通じて不特定多数の人に業務を委託する形態のことです。2015年の調査で既婚女性の就業率が全国平均を大きく下回っていた奈良市ですが、現在はこの事業に約100名が登録し、全国最大規模のコミュニティへと成長しました。
特筆すべきは、参加者同士が支え合う仕組みです。2019年度内には、企業から仕事を一括受注してメンバーで融通し合う自立組織の立ち上げも計画されています。孤独になりがちな在宅ワークを、チームの力で持続可能なキャリアへと進化させているのです。
編集者が見る「シェア連携」成功の鍵とは
これら2つの事例に共通するのは、自治体が持つ「資産」と、スタートアップが持つ「仕組み」が完璧に融合している点です。私は、地方創生の鍵は「自分たちの価値を再定義すること」にあると考えます。地元の人には当たり前の風景が、外の人には宝物に見えるのです。
単なる行政の支援に甘んじるのではなく、奈良市の女性たちのように自立を目指す姿勢こそが、真の地域活性化を生むのではないでしょうか。自治体の知恵と企業のスピード感が組み合わされば、日本の地方はもっと面白く、可能性に満ちた場所になるはずです。
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