石川県小松市に構える老舗の東酒造が、伝統的な日本酒造りの現場に最新のデジタル技術を導入するという、非常に興味深いニュースが飛び込んできました。2019年10月25日現在、同社は「酒の味」を左右する最重要工程の一つである蒸し米の生産管理に、IoT(モノのインターネット)を導入することを明らかにしています。
今回の革新的な取り組みの核心は、酒米を蒸す際に使用される「甑(こしき)」という大きな専用容器に温度センサーを設置する点にあります。この甑とは、古くから酒造りに欠かせない巨大なせいろのような道具ですが、内部の温度を均一に保ち、理想的な蒸し上がりを実現するには、熟練の蔵人による長年の経験と勘が不可欠とされてきました。
IoTとは、物理的なモノをインターネットに接続し、情報のやり取りを可能にする技術を指します。東酒造は、このセンサーから得られる膨大な温度情報をクラウド、つまりインターネット上の仮想的なデータ保存庫へとリアルタイムに蓄積する仕組みを構築しました。これにより、ブラックボックス化しがちだった伝統の技を可視化することに成功しています。
SNS上では「老舗の新しい挑戦にワクワクする」といった期待の声が寄せられる一方で、「データで伝統の味が変わらないか」と注目するファンの投稿も見受けられます。しかし、私の視点では、この試みは単なる効率化にとどまらず、若手への技術継承をスムーズにし、安定したクオリティを維持するための極めて論理的な「伝統の守り方」であると感じます。
2019年中に本格稼働するこのシステムにより、東酒造は昨年度と比較して5%の生産性向上を目標に掲げています。さらに、蓄積された精密なデータを分析することで、これまでにない味わいを持つ魅力的な新商品の開発にも着手する予定です。テクノロジーと伝統が融合した新しい日本酒が誕生する日は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
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