広島県東広島市に拠点を置き、マツダへの供給を主力とする自動車部品メーカーの「オンド」が、次なる成長の舞台として中国での勝負に打って出ました。同社は、自動車の心臓部ともいえる変速機(トランスミッション)の中核部品を増産するため、中国の江蘇省に新たな工場を建設することを決定したのです。
2019年11月08日現在、世界の自動車市場は複雑な局面に立たされています。米中貿易摩擦の激化による景気後退の影が忍び寄り、中国国内の自動車販売も足元では減速傾向にあります。しかし、こうした逆風の中でもオンドが巨額投資を決断した背景には、広島から世界を見据えるモノづくり企業としての強い覚悟と、緻密な計算に基づいた長期的な成長シナリオが存在しているのでしょう。
土地・建物だけで12億円!2020年秋の操業開始を目指す巨大プロジェクト
今回、江蘇省の工業団地に建設される新工場は、敷地面積が約1万6千平方メートルという広大な規模を誇ります。投資額は土地と建物だけで12億円にのぼり、2020年04月の竣工を経て、同年秋の操業開始を予定しているとのことです。このプロジェクトは同社にとって海外3拠点目、中国国内では2拠点目の重要な柱となります。
ここで生産されるのは、オートマチックトランスミッションの性能を左右する「プラネタリーキャリア」という部品です。この言葉に馴染みのない方も多いかもしれませんが、これは「遊星歯車」と呼ばれる複数のギアを保持し、エンジンの力を効率よくタイヤに伝えるための、まさに変速機の要となる精密パーツです。
近年の多段化する変速機において、この部品の重要性は増すばかりです。一般的な6速変速機では3つ、より高度な8速変速機では4つものプラネタリーキャリアが搭載されるため、自動車の高性能化が進むほど需要が拡大する仕組みとなっています。既存工場と連携し、細かいパーツ製造から最終組み立てまでを最適化することで、2025年には売上高50億円という高い目標を掲げています。
「5年、10年先を見据える」栗栖社長が語る中国市場の真の価値
SNS上では、このニュースに対して「中国市場が冷え込む中での投資は勇気がいるが、日系メーカーの底力を感じる」といった声や、「広島の企業が世界で戦う姿は誇らしい」というエールが寄せられています。不透明な情勢下での決断に対し、多くの投資家や関係者がその動向を注視していることが伺えます。
オンドの栗栖哲成社長は、現状の市場停滞を一時的なものと捉え、「5年先、10年先を見据えた投資である」と力強く断言しました。世界最大の自動車マーケットとしてのポテンシャルは揺るぎないという信念に基づき、長期的な視点で投資を回収する構えです。困難な時期にこそ攻めの姿勢を崩さない同社の戦略は、製造業における一つの理想形と言えるのではないでしょうか。
編集者の視点から言えば、この投資は単なる規模拡大ではなく、サプライチェーンの効率化を狙った非常に理にかなった一手だと感じます。地産地消の体制を強化しつつ、技術力を武器にグローバル市場でのシェアを盤石にするオンドの挑戦は、日本の製造業が直面する課題に対する一つの明確な回答となるでしょう。
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