2019年07月21日の投開票日に向けて、参議院議員通常選挙がいよいよ佳境を迎えています。今回の選挙戦を眺めていて特に印象的なのは、各政党や候補者たちがSNSをフル活用して有権者へ熱心に語りかけている姿ではないでしょうか。こうしたインターネットを通じた選挙運動が正式に認められたのは、実は2013年という比較的最近のことなのです。
かつては厳しく制限されていたネット上での活動ですが、2013年に公職選挙法が改正されたことで、ホームページやLINE、Twitter(現X)といったSNSを介した投票の呼びかけが広く解禁されました。この法改正は、当時の国会で全会一致という極めて異例のスピードで成立し、同年07月の参院選から運用が開始されています。
SNSでは、候補者の掲げる政策だけでなく、熱気あふれる街頭演説の様子をリアルタイムで動画配信することも可能です。視覚的な情報が増えることで、有権者はより親近感を持って政治に触れることができるようになりました。SNS上では「推しの候補者のライブ配信が始まった!」といった投稿も目立ち、若年層を中心に政治への関心が広がるきっかけとなっています。
しかし、インターネットであれば何でも許されるわけではありません。有権者にとって最も注意すべきなのは、電子メールを利用した投票の呼びかけが、現在も一貫して禁止されている点です。これは、他人の名前を語る「なりすまし」という行為を防ぐことが技術的に難しく、根拠のない誹謗中傷が拡散してしまうリスクを考慮したためだと言われています。
また、ネット上の情報は印刷した瞬間にその性質が変わります。画面上で見る分にはネット選挙の対象ですが、プリントアウトして配布すれば、それは従来の「ビラ」や「チラシ」として扱われるのです。公職選挙法第142条では、配布できる紙媒体の枚数に厳格な上限が設けられているため、良かれと思って印刷して配ると法律違反になる恐れがあります。
デジタルとアナログの狭間で揺れる日本の選挙ルール
選挙運動の時間制限についても、ネット特有の柔軟性が認められています。街宣車や拡声器を用いた騒々しい運動は、投票日前日の午後20時までと決められていますが、ネット上であれば日付が変わる直前まで更新を続けることが可能です。SNSのタイムライン上では、最後の瞬間まで支持を訴え続ける候補者と、それに応えるユーザーの熱い交流が続いています。
一方で、世界に目を向けるとアメリカのようにネット活用が当選の絶対条件となっている国もあります。候補者は詳細なメールマガジンを配信し、膨大なデータから支持者候補を特定する手法を確立しています。これに対し、日本では電子投票の導入すら目処が立っていない状況です。エストニアのような先進事例はあるものの、日本では在外投票での実験が模索される段階に留まっています。
私は、ネット選挙の解禁によって「政治との距離」が縮まったことは素晴らしい進歩だと感じています。しかし、メール規制や印刷物の制限など、アナログ時代の法律を無理やりデジタルに当てはめたような歪さが残っているのも事実です。情報の真偽を見極めるリテラシーを私たちが養うとともに、より自由で透明性の高い議論ができる法整備を期待したいところですね。
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