四方を広大な海に囲まれた日本は、実は世界第6位の領海・排他的経済水域を誇る「海洋大国」であることをご存じでしょうか。この深い紺碧の底には、次世代のエネルギー源として注目されるメタンハイドレートや、ハイテク産業に欠かせないレアメタルといった貴重な資源が眠っています。しかし、その広大なフロンティアを探索するには、過酷な水中環境という大きな壁が立ちはだかっていました。
そこで今、大きな注目を集めているのが、光の力で水中を可視化する「LiDAR(ライダー)」という革新的な技術です。2019年11月05日現在、これまで主流だった音波やカメラの弱点を克服するこの技術が、資源探査や老朽化したインフラの点検といった分野で、新たな市場を創出しようとしています。SNSでも「ついに海の中まで3Dで丸見えになるのか」と、その未来感に期待の声が上がっています。
カメラとソナーの弱点を克服する「光の目」LiDARとは?
水中を測るための従来の道具には、一長一短がありました。カメラは近場の映像を映し出すのは得意ですが、水が濁っていたり距離が離れたりすると、途端に視界を失います。一方、魚群探知機でおなじみの「ソナー」は遠くまで音波が届くものの、対象物の細かな形を捉えるのは苦手でした。この両者の隙間を埋める存在こそが、電波の代わりにレーザー光を照射するLiDARです。
LiDARは、照射した光が物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測することで、対象物との距離を正確に測り、立体的(3次元)なデータとして再現できるのが最大の特徴でしょう。この「水中でも形がはっきり分かる」という利点は、精密さが求められる海底工事や、複雑な構造を持つダムの点検において、まさにゲームチェンジャーとなる可能性を秘めていると私は確信しています。
海底から湧き出すガスを特定!20メートル先からCO2を見抜く驚異の精度
レーザー技術総合研究所の染川智弘上席研究員は、この技術をさらに進化させ、海中に溶け込んだガスの種類や濃度を特定する装置の開発に成功しました。これは物質に光を当てた際、その物質特有の波長が返ってくる性質を利用したものです。例えば、20メートル離れた場所からペットボトルの中の二酸化炭素を言い当てることすら可能だというから驚きを隠せません。
実際に2018年02月には、沖縄県の竹富島周辺において、水深約20メートルの海底から噴き出す火山性ガスの観測に成功しています。この技術を応用すれば、海底に二酸化炭素を封じ込める「CCS(二酸化炭素回収・貯蔵)」の監視も行えるようになります。10年以内の実用化を目指すこの研究は、地球温暖化対策と資源確保の両面で、日本の未来を支える重要な鍵となるはずです。
産官学が連携して挑む「水中DX」の最前線
スタートアップ企業のトリマティスが中心となり、JEITAの支援を受けて活動する「ALANコンソーシアム」も、水中ライダーの開発を加速させています。2019年08月には、神奈川県横須賀市の実験水槽で無人潜水機を用いた実験が行われました。耐圧容器に収められたライダーにより、水中の置物の形を見事に3D計測することに成功しており、3年後のビジネス展開を見据えた動きが本格化しています。
一方で、三菱電機特機システムは、数千万円という高価格帯ながらも圧倒的な性能を誇る「U4LE」で勝負を挑んでいます。緑色のレーザーを採用することで、少し濁った水の中でも50メートル先まで探知できる能力を備えています。安価なサービスから超高性能な機体まで選択肢が広がることで、今後は海洋ゴミの調査や養殖場の管理など、私たちの生活に密着した分野への普及も進んでいくことでしょう。
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