【ブリュッセル発】地球温暖化対策の国際的な枠組みである**「パリ協定」の目標達成に向け、ヨーロッパで二酸化炭素などの温暖化ガス(温室効果ガス)の排出量を2050年までに「実質ゼロ」とする動きが急速に広まっています。この「実質ゼロ」とは、排出される温暖化ガスの量と、森林などによる吸収や、技術的な除去によって大気中から取り除く量が均衡し、差し引きでゼロになる状態を指す、極めて意欲的な目標です。当初、パリ協定では「産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑制」することが主要な目標でしたが、さらなる気候変動リスクの低減を目指す「1.5度以内」という努力目標があり、今回の「2050年実質ゼロ」は、まさにこの1.5度目標に整合する**対策なのです。
この環境対策をリードする動きとして、イギリス政府は2019年6月11日、2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を、既存の法律を改正する形で法制化する方針を正式に発表しました。早期の成立が見込まれており、主要7カ国(G7)の中でこの目標を法律で定めるのは世界初となる見通しです。メイ首相は「我々の子供のために環境を守るため、今こそ先に進むべきだ」との声明で、この歴史的な決定の意義を強調しています。この大胆な政策転換は、環境問題に対する欧州の強い意思を示すものと言えるでしょう。
イギリスに先立ち、ヨーロッパでは環境対策の強化を求める世論の高まりが、各国政府の背中を押しています。フランス政府はすでに同様の目標を盛り込んだ法案を準備しており、ドイツのメルケル首相も2019年5月には2050年排出ゼロに向けた議論を始めることを表明しました。欧州各地では温暖化対策の強化を求めるデモが相次いで発生し、5月下旬に行われた欧州議会選挙では、環境保護を訴える環境会派が議席を大きく伸ばすという結果になり、市民の関心の高さが政策決定に直結したと言えるでしょう。この欧州の「環境重視」の姿勢は、日本や米国といった先進国を大きく凌駕する、突出した動きだと評価できます。
しかし、この「2050年実質ゼロ」の目標実現には、極めて高いハードルが待ち構えています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の試算によると、目標達成のためには、まず電力部門において、70〜85パーセントを再生可能エネルギーで置き換える必要があり、残りは原子力や二酸化炭素回収・貯留(CCS)装置を付けた化石燃料でまかなう必要があるとされています。CCSとは、発電所や工場から排出される二酸化炭素を大気に出す前に回収し、地下深くに貯留する技術のことで、排出を抑制するための重要な技術です。さらに運輸部門では、乗用車のほとんどを電動化しなければならないとの見解も示されています。
🌍世界の足並みは不揃い?目標達成に必要な巨額の投資
この野心的な目標を実現するためには、多額の追加投資が不可欠となります。IPCCの分析によれば、1.5度目標に合致する排出量削減を実現するには、世界全体で年間8300億ドル(約89.9兆円)ものエネルギー関連への追加投資が必要になると試算されています。また、二酸化炭素1トンを削減するためにかかるコストは、2度目標を目指す場合に比べて3〜4倍に膨れ上がるという指摘もあり、国際機関の担当者からは「トラックや飛行機といった、代替が難しい化石燃料を使用する部門での排出削減は困難を極める」との声も上がっています。
このような状況にもかかわらず、世界の足並みは残念ながら揃っていません。アメリカはトランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明するなど、温暖化対策に消極的な姿勢を見せています。日本は「21世紀後半の早い時期までの実質ゼロ」を目指す目標を設定していますが、欧州の50年目標と比べると、その意欲はまだ限定的でしょう。また、中国などの新興国は対策に前向きになりつつありますが、「まず先進国が対策を主導すべきだ」という立場を崩していません。
欧州、特に仏独英の三大国が足並みを揃え、世界をリードすることで、2020年から適用が始まるパリ協定の実施に向けた議論で主導権を握りたいという狙いも透けて見えます。実際、2019年6月17日からは協定の実施ルールを議論するための国連会合がドイツのボンで開催される予定であり、欧州の動きが国際的な議論に与える影響は計り知れないでしょう。しかし、電力の8割を石炭火力発電に依存するポーランドなど、欧州域内でも目標設定に反対する可能性のある国もあり、欧州共通の目標として確立できるかは依然として不透明な状況です。
🗣️SNSでの反響と今後の展望
この欧州の動きに対し、SNS上では「ついに本気で環境対策が進むのか」「他国も追随すべきだ」といった期待の声が多く寄せられる一方で、「本当に実現できるのか」「多額の税金が使われることになるのではないか」といった懸念や「経済に悪影響が出るのでは」といった議論も巻き起こっています。多くの人々がこの問題の重要性を認識していることは間違いありませんが、具体的な実現方法やコスト負担に対する関心も高いと言えるでしょう。
私自身の意見としては、欧州の環境対策に対する強いリーダーシップは、称賛に値するものです。極端な熱波や豪雨、海面上昇、生態系への打撃などのリスクを減らす可能性が高い「1.5度目標」の達成を目指すことは、未来の世代への責任を果たすことにつながります。欧州の突出した姿勢が、米国など他の国・地域とあつれきを生み、国際的な政策協調を難しくするリスクも指摘されていますが、この果敢な挑戦が、停滞しがちな世界の温暖化対策全体をけん引する起爆剤となることを強く期待するものです。
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