2019年11月05日、自動車業界に衝撃が走りました。軽自動車の雄として知られるスズキが発表した2019年04月から09月期の連結決算は、純利益が前年同期比で42%も減少する793億円という厳しい結果になったのです。この期間として減益を記録するのは実に10期ぶりのことであり、長らく続いてきた快進撃にブレーキがかかった形となっています。
この急激なブレーキの最大の要因は、かつてスズキの成長を牽引してきた「インド市場」の冷え込みにあります。インドはスズキにとって世界戦略の要とも言える重要拠点ですが、経済成長の鈍化がそのまま自動車販売の不振に直結してしまいました。2020年03月期の通期見通しでも純利益は前期比22%減の1400億円が見込まれており、2期連続の減益は避けられない見通しです。
インド経済の減速と通貨安がもたらす逆風
記者会見の席上で、鈴木俊宏社長は「インド市場の回復時期を読み切るのは困難」と強い懸念をあらわにしました。2019年04月から09月期の売上高は前年同期比で9%減の1兆7554億円に留まり、世界販売台数も140万台と17%も落ち込んでいます。特に利益の柱である現地子会社「マルチ・スズキ」の営業利益が67%減の283億円と激減したことが、グループ全体の足を大きく引っ張る結果となりました。
インド政府による景気刺激策も、市場が期待したほどの積極性を欠いており、消費者の財布の紐は依然として固いままです。さらに「為替差損(かわせさそん)」という追い打ちもありました。これは円安が進むと海外での利益が膨らむ一方、今回のようにユーロやインドルピー、パキスタンルピーが下落すると、日本円に換算した際の利益が目減りしてしまう現象を指します。
この通貨価値の変動により営業利益は161億円も押し下げられた計算で、現地での原材料コストの増大も大きな負担となっています。私は、スズキの強みである「徹底したコスト管理」をもってしても、国家レベルの経済停滞と為替の荒波を乗り越えるのは容易ではないと感じました。一国の市場に依存しすぎることのリスクが、顕著に表れた事例と言えるのではないでしょうか。
国内生産体制の改革とトヨタ提携後の展望
一方、日本国内に目を向けると、ここでは別の課題が浮き彫りになっています。スズキは完成検査を確実に行うための生産調整を実施しており、この減産が1台あたりの「固定費(こていひ)」負担を増大させました。固定費とは、工場の維持費や人件費など、生産台数に関わらず発生する費用のことです。生産量が減れば1台ごとに割り当てられるコストが増えるため、結果として利益率が悪化してしまったのです。
SNS上では「品質を最優先する姿勢は評価できる」といった信頼の声が上がる一方で、「インド頼みの体質をどう変えるのか」といった冷静な分析も見られました。今後の注目点は、資本提携したトヨタ自動車傘下のダイハツ工業との関係性でしょう。鈴木社長は「すみ分けはせず、切磋琢磨して技術を磨く」と述べており、競争を通じたレベルアップを掲げています。
2020年03月期の売上高は3兆5000億円を見込んでおり、業績のV字回復に向けた種まきは始まっています。具体的には、インドでの排ガス規制強化に合わせた新モデルの投入や、法人税減税分を原資とした値引き戦略で需要を掘り起こす構えです。困難な状況下で、スズキがいかにして「小回りの利く経営」を再定義し、再び成長軌道に乗るのか。その手腕が今、試されています。
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