タクシー配車アプリの風雲児「みんなのタクシー」が、日本の移動インフラを塗り替える大きな一歩を踏み出しました。2019年11月5日、同社はKDDI、NTTドコモ、ゼンリンデータコム、そして帝都自動車交通の4社と資本業務提携を結んだことを発表したのです。出資額こそ非公表ですが、通信界の巨頭2社が同時に名を連ねるという異例の事態に、業界内では驚きの声が広がっています。
この提携の背景にあるのは、次世代移動サービス「MaaS(マース)」への期待感でしょう。MaaSとは「Mobility as a Service」の略称で、バスや電車、タクシーなどのあらゆる移動手段を一つのITサービスとして統合し、予約から決済までをシームレスに行う概念を指します。自動運転時代の到来を見据え、タクシーが日々蓄積する膨大な走行データは、今や情報の宝庫として極めて高い価値を秘めているのです。
JR東日本との連携で加速する利便性
今回の発表は通信会社だけに留まりません。みんなのタクシーは同日、JR東日本とも業務提携を締結しました。これにより、国際自動車や大和自動車交通など、都内を走る約9000台のタクシーで、JR東日本のMaaSアプリ「Ringo Pass(リンゴパス)」が利用可能になります。既存の配車アプリ「S.RIDE(エスライド)」と連携することで、鉄道からタクシーへの乗り継ぎが、かつてないほどスムーズになるはずです。
SNS上では「ドコモとauの両方が入るのは熱い」「Ringo Passでタクシーに乗れるなら、もう財布を出す必要がない」といった、利便性の向上を歓迎する投稿が目立っています。これまでバラバラだった移動手段が、スマートフォンの画面一つでつながっていく様子に、多くのユーザーが未来の兆しを感じ取っているのでしょう。編集者としても、このスピード感あふれる統合は、ユーザー体験を劇的に変える良策だと確信しています。
サービス網の拡大も急ピッチで進んでいます。2019年4月から東京都内で展開を開始した「S.RIDE」ですが、2019年度中には横浜市など近隣都市への進出も計画されています。さらに注目すべきは、AIを活用した「需要予測サービス」の提供です。これは走行データから乗客が見込めそうなエリアを割り出し、ドライバーへリアルタイムに提示する仕組みで、タクシーの空車時間を減らす画期的な試みと言えるでしょう。
数千万の顧客基盤を武器に先行他社を猛追
今回の提携により、みんなのタクシーは最強の武器を手にしました。それは、NTTドコモとKDDIが抱える数千万人の顧客基盤です。現在、決済サービス「d払い」の利用者は1000万人、「au PAY」は600万人に達しています。これら巨大な決済経済圏を取り込むことで、ソフトバンクや中国の滴滴出行(ディディ)が出資する「DiDiモビリティジャパン」などの先行サービスに対し、一気に逆転攻勢をかける構えです。
タクシーは単なる移動手段から、データを生み出すインフラへと進化しています。私は、今回の提携こそが「日本型MaaS」のスタンダードを確立する試金石になると考えています。通信、鉄道、そしてタクシー。それぞれの強みが重なり合ったとき、私たちの「移動」という概念そのものが、より自由でストレスのないものに書き換えられていくに違いありません。この熱い覇権争いから、今後も目が離せません。
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