世界を代表する補聴器ブランドの一角、デンマークの「オーティコン」。その日本法人として1973年5月10日に設立されたオーティコン補聴器(神奈川県川崎市)が、今、日本の聞こえの現場に劇的な進化をもたらしています。同社が誇る最大の武器は、一人ひとりの耳の形状に完璧にフィットさせる「耳穴型」補聴器の国内製造体制です。川崎の本社工場では、最先端の技術と職人技が融合し、日々、世界に一つだけのデバイスが誕生しています。
補聴器には、耳の後ろに掛ける「耳かけ型」や、ポケットに入れて使う「ポケット型」、さらにはメガネと一体化したタイプなど、多様な種類が存在します。その中でも、目立ちにくく装着感に優れた耳穴型は非常に人気が高いモデルです。オーティコンはこの耳穴型の全量を国内で生産しており、受注から出荷までわずか1週間以内という驚異的なスピードを実現しました。2019年8月14日現在、この迅速なデリバリー体制は業界でも注目を集めています。
SNS上では「オーダーメードなのに届くのが早くて驚いた」「自分の耳にぴったり合うから、長時間つけていても疲れにくい」といった喜びの声が数多く寄せられています。このスピードの秘密は、3次元(3D)プリンターを活用したデジタル製造プロセスにあります。販売店で採取された耳の型が届くと、すぐさまコンピューター上で最適な形状が設計され、ハイテクな成形機によって形作られるのです。まさに最新テクノロジーの恩恵と言えるでしょう。
自社開発プロセッサが変える「聞こえ」の常識と今後の市場展望
オーティコンの強みは、単なる製造スピードだけではありません。特筆すべきは、心臓部である「音声処理用プロセッサ」を自社でゼロから開発している点です。これは、パソコンやスマホでいうCPUにあたる非常に重要な部品で、音をいかに自然に、クリアに処理するかを決定づけます。グループ内に聴力診断装置や人工内耳を扱う専門企業を有しているからこそ、医学的な知見に基づいた高度な設計が可能となっているのです。
さらに、これまでのデジタル補聴器の常識を覆す製品も登場しています。従来の製品は、話し手の方向の音だけを強調する「指向性」が一般的でしたが、オーティコンは360度全方位の音を自然に届ける技術を確立しました。周囲の喧騒の中でも、背後からの呼びかけや横からの環境音を遮断することなく、豊かな音の世界を再現してくれます。このような革新的なアプローチは、利用者の生活の質を劇的に向上させるに違いありません。
現在、日本の補聴器市場は高齢化社会を背景に、年率2%から4%の安定した成長を続けており、年間出荷台数は約58万台に達しています。しかし、難聴を自覚している人のうち実際に補聴器を利用している割合は14.4%と、欧米諸国に比べて大幅に低いのが現状です。デンマークや英国では約50%に達していることを考えると、日本にはまだ大きな「壁」が存在すると言わざるを得ません。普及には制度面の充実も期待されます。
私は、補聴器が単なる医療機器を超えて、人生を豊かにする「ウェアラブルデバイス」へと進化すべきだと考えています。オーティコンのような企業が、利便性と性能を追求し続けることで、補聴器に対するネガティブなイメージは払拭されるはずです。誰もが自然に音を楽しめる社会の実現には、私たちメディアも含めた社会全体の理解促進が不可欠です。素晴らしい技術が、より多くの人々の毎日を輝かせることを願ってやみません。
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