2019年11月05日、愛媛県の中村時広知事は記者会見において、県が誇る養殖魚「スマ」の総称を「媛(ひめ)スマ」に決定したと誇らしげに発表しました。スマという魚に馴染みがない方も多いかもしれませんが、実は「全身がトロ」と称されるほど脂の乗りが抜群で、市場ではマグロに匹敵する高値で取引される超高級魚なのです。
これまでは、重さ2.5キログラム以上かつ脂質25%以上という非常に厳しい独自基準をクリアしたエリート個体のみが、「伊予の媛貴海(ひめたかみ)」というプレミアムブランド名で流通していました。しかし、今回の決定により基準に届かなかった個体も「媛スマ」として統一されることで、他県産との差別化が明確になり、愛媛ブランドの底上げが期待されます。
愛媛県は2016年から愛南町にて本格的な養殖事業をスタートさせており、2019年度には約1万7000尾もの生産を見込むまでに成長しました。中村知事は、赤ちゃん魚を育てる「種苗(しゅびょう)生産施設」の拡充が進んだことを受け、2022年度には年間8万尾の稚魚を供給するという、非常に意欲的な目標を掲げています。
産官学が連携する「媛スマ普及促進協議会」の設立
「媛スマ」をより身近な存在にするための具体的な動きも加速しており、2019年11月13日には、愛媛県や愛南町、愛媛大学、そして生産者が一丸となった「媛スマ普及促進協議会」が設立される予定です。この組織では、国内外への販売戦略を練り上げるだけでなく、効率的な生産体制の構築にも全力で取り組むことになっています。
注目すべきは、スマ専用の餌(飼料)の開発や、愛媛の冬の冷たい海にも耐えられるような品種の育成といった技術的な挑戦でしょう。こうした研究が進むことで生産コストが抑えられれば、現在は高級品であるスマが、私たちの食卓へもっと手軽に並ぶ日が来るかもしれません。
SNS上では「スマという魚を初めて知ったけれど、全身トロなんて聞いたら食べないわけにはいかない」「愛媛の新しい名産品として定着してほしい」といった期待の声が続出しています。希少価値の高い「伊予の媛貴海」は生産量の約3割に留まる見込みですが、それ以外の「媛スマ」も十分にその実力を発揮してくれるはずです。
筆者の個人的な見解としては、単なる特産品に留まらず、マグロに代わる持続可能な養殖資源としてスマが脚光を浴びる意義は極めて大きいと感じます。愛媛県が総力を挙げて取り組むこの「媛スマ」プロジェクトが、日本の魚食文化に新たな旋風を巻き起こす瞬間を、私たちは今まさに目撃しているのではないでしょうか。
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