歴史の転換点となった、東西冷戦の象徴である「ベルリンの壁」が崩れ去ってから、2019年11月09日でちょうど30年の節目を迎えました。かつて人々を隔てていた物理的な壁の崩壊は、国境を越えてヒト・モノ・カネが自由に飛び交う「グローバル化」という輝かしい未来の扉を開いたはずでした。
SNS上では「30年前の熱狂が懐かしい」「自由こそが正義だと信じていた」といった当時を懐かしむ声がある一方で、現状の閉塞感に対して「形を変えた新しい壁が立ちはだかっている」といった冷めた意見も目立ち、理想と現実のギャップが浮き彫りになっています。
壁なき時代の到来によって、世界の貿易量は爆発的に増加しました。国内総生産(GDP)に占める貿易の割合は、1980年代の4割以下から2000年代には6割にまで跳ね上がり、企業は国境を意識せずに効率的なサプライチェーン、つまり「部品調達から製造・販売までの供給網」を世界中に巡らせたのです。
「世界の工場」となった中国とデータ経済の台頭
この激流に乗り、劇的な進化を遂げたのが中国です。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟を追い風に急成長を遂げ、2010年にはGDPで日本を抜き去り、世界第2位の経済大国へと駆け上がりました。日本企業の象徴でもあったベルリンの「ソニーセンター」が所有者を次々と変えた事実は、日本が世界経済の主役から一歩退いたことを象徴しているようで、切なさを禁じ得ません。
一方、デジタル分野では米国の「GAFA」が圧倒的な力を見せつけました。特にiPhoneの普及は、インターネットの利用者を世界人口の約半分にまで拡大させた立役者です。スマホの誕生以来、ネット上を行き交うデータ量は1000倍以上に膨れ上がり、現代は石油に代わって「データ」が最大の資源となる時代へと突入しました。
変質するグローバル化と「新たな壁」の正体
しかし、自由を謳歌したはずのグローバル主義は、今や大きな歪みを生んでいます。GAFAによる情報の独占に欧州が警戒を強め、個人情報の流出を阻む規制が広がるなど、かつての同盟国の間にも不協和音が響いています。かつての「鉄のカーテン」が消え、今度は「竹のカーテン」と呼ばれる米中の分断が深まっているのです。
米中対立による高関税の応酬は、まさに経済的な「壁」そのものです。2019年の貿易量の伸び率は過去10年で最低水準になると見られており、直接投資も冷え込んでいます。お互いに手を取り合うこともなく、かといって競い合うわけでもない、この「不自然な冷戦状態」は、世界の成長を明らかに鈍化させています。
自由な競争がもたらしたのは、豊かさだけではなく深刻な格差と対立でした。私は、今の世界に必要なのは効率性だけを追い求める「むき出しのグローバル化」ではなく、共通の価値観を守るための「知恵ある共存」だと考えます。30年前に人々が壁を壊した時の情熱を思い出し、私たちは今こそ新しい連帯の形を模索すべきではないでしょうか。
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