世界の経済を支える「産業のコメ」とも呼ばれる鉄鋼の生産に、異変が起きています。世界鉄鋼協会が2019年11月27日までに公表したデータによると、世界64カ国・地域における10月の粗鋼生産量は、前年の同じ月と比べて2.8%減の1億5149万トンとなりました。これで2ヶ月連続のマイナス成長となり、世界的な景気後退の波が、ついに鉄の生産現場を直撃していることが浮き彫りになりました。
粗鋼とは、鉄鉱石などを溶かして不純物を取り除いた直後の、まだ加工されていない鋼鉄の塊を指します。この生産量が減るということは、それだけ世界中のビル建設や自動車製造、家電製品の勢いが弱まっている証拠なのです。SNS上でも「景気の冷え込みが数字でバレてきた」「鉄鋼が減れば次は運送や販売も厳しくなりそう」といった不安の声が広がっており、市場関係者だけでなく一般層からも強い関心が寄せられています。
今回の発表で最も衝撃的だったのは、世界の鉄鋼生産の半分以上を占める「巨像」中国が、3年半ぶりにマイナスへ転じたことです。米中間の貿易摩擦が長期化し、これまで爆発的な成長を続けてきた中国の需要にも、明らかな陰りが見え始めました。2019年10月の中国の生産量は8152万トンと、前年比0.6%の減少を記録しています。これは、世界の鉄鋼市場がかつてない局面に入ったことを示唆する歴史的な出来事といえるでしょう。
製造業の冬が到来?主要国が軒並みマイナスに転じる理由
中国だけでなく、日本を含む世界の主要国が軒並み減産に動いています。自動車や産業機械といった、鉄鋼の重要なお客様である製造業向け需要の減少が鮮明になったことが原因です。鋼材価格の下落によって、鋼材を輸出すればするほど赤字になる「採算割れ」の状態が続いており、日本国内の鉄鋼メーカー各社も、生き残りをかけて厳しい生産調整を余儀なくされています。
私は、この減産の動きは単なる一時的な不況ではなく、世界経済の構造的な変化の前触れではないかと感じています。鉄が売れないということは、人々の購買意欲や企業の投資意欲がそれだけ冷え込んでいるということであり、私たちは今、非常にデリケートな経済の過渡期に立っているのでしょう。主要国のトップメーカーが、いかにしてこの荒波を乗り越え、次の一手を打つのかが、2020年以降の景気を左右する鍵となるはずです。
中国の減産については、国慶節に伴う環境規制という一時的な要因も考えられますが、国営企業の再編や設備の見直しなど、より深い構造改革が進む可能性も否定できません。一方で、沿岸部では高い生産能力を持つ最新設備の建設も進んでおり、本格的な減産体制に入るかは依然として不透明です。2019年11月28日現在、鉄鋼市場は足元で底打ちの兆しを見せつつも、先行きへの期待と不安が複雑に交錯する状況が続いています。
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