国産初のジェット旅客機として大きな期待を背負っている「三菱スペースジェット(旧MRJ)」が、今まさに重大な局面を迎えています。2019年11月15日、炭素繊維の世界的リーダーである東レが、同機向けの主要部品の生産を停止することが明らかになりました。日本の技術力を結集した「日の丸ジェット」のプロジェクトにおいて、主要サプライヤーが供給網から離れるという異例の事態に、業界内外では激震が走っています。
東レが供給を断念した部品には、鉄よりも軽く、アルミニウムよりも強い特性を持つ「炭素繊維(カーボンファイバー)」が使用されています。これは航空機の燃費性能を劇的に向上させる魔法の素材ですが、加工には極めて高度な技術が求められます。本来であれば、この素材こそがスペースジェットの競争力の源泉となるはずでした。しかし、度重なる機体開発の遅延により、量産化による利益確保が困難であるとの経営判断が下されたようです。
今後は、親会社である三菱重工業が東レに代わって自社で部品加工を担う形となります。これを「自社で一貫生産できる強み」と捉えることも可能ですが、専門メーカーが採算を理由に手を引いたという事実は、プロジェクトの厳しさを物語っているでしょう。SNS上では「開発が進まない焦燥感を感じる」といった声や、「日本の技術を結集してなんとか飛び立ってほしい」といった応援と不安が入り混じった複雑な反応が広がっています。
私は、今回の東レの決断は、民間ビジネスとしての冷徹な判断と、開発の長期化が招いた必然的な帰結だと感じています。三菱重工が内製化することで、意思決定のスピードが上がる期待はありますが、炭素繊維加工の専門知見をどこまで補完できるかが鍵となるでしょう。2019年11月15日現在の状況を見る限り、国産旅客機が世界の空を自由に飛び回るまでの道のりは、決して平坦ではないことが改めて浮き彫りになりました。
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