東京2020パラリンピックまであと1年!車いすテニスを支える「人車一体」の技術革新と職人の情熱

2020年の東京パラリンピック開幕まで残り1年を切り、アスリートたちの熱気は最高潮に達しています。2019年08月03日に仙台市の泉総合運動場で開催された国際車いすテニス大会「仙台オープン2019」の会場では、競技の勝敗を左右する「もう一つの戦い」が繰り広げられていました。それは、選手と車いすを極限までシンクロさせる技術者たちの緻密な調整作業です。選手のポテンシャルを最大限に引き出すため、ミリ単位の妥協も許さない職人魂がそこにはありました。

競技用車いすメーカーの雄として知られるオーエックスエンジニアリングの安大輔さんは、噴き出す汗を拭う間も惜しんで作業に没頭しています。車輪の回転具合や座面の角度など、細部にわたる調整を繰り返す姿は真剣そのものです。SNS上では「選手の背中を支えるメカニックの姿に感動する」「道具というより体の一部なんだな」といった、技術者への敬意を込めたコメントが多く寄せられており、パラ競技における機材の重要性が広く認知され始めていることが伺えます。

この日、安さんのもとで採寸を行っていたのは、小学6年生の門脇圭祐君です。車いすテニス歴5年を誇る彼の瞳には「パラリンピックでの金メダル」という輝かしい夢が宿っています。成長期にある彼の体に合わせ、最適なサイズを見出す作業は1時間半にも及びました。競技用車いすは、腕の力だけで操作するものではありません。旋回性能を向上させ、重心移動をスムーズに伝えることで、初めてコート上で自由自在な動きが可能になるのです。

安さんは「車いすは体とシンクロさせなければならない」と力説します。トッププロともなれば、その調整時間は4時間を超えることも珍しくありません。ここでいう「シンクロ」とは、道具が体の一部として違和感なく馴染む状態を指しており、まさに「人車一体」の境地を目指すプロセスと言えるでしょう。私個人としても、こうした地道な対話と微調整の積み重ねこそが、日本が世界に誇るモノづくりの真髄であり、アスリートの勇気を支える源泉だと確信しています。

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メダル122個を支えた「オーエックス」の飽くなき技術革新

1993年から競技用車いすの世界に参入したオーエックスエンジニアリングは、後発メーカーながらも驚異的なスピードでシェアを拡大してきました。2016年のリオデジャネイロ大会では、日本代表選手の多くが同社製を選択しています。その強みは、各競技に精通した専門スタッフを配置し、選手の細かな要望を徹底的に反映させるオーダーメイド体制にあります。これまでに同社の車いすを使用した選手が獲得したメダル総数は122個にものぼります。

車いすの進化は目覚ましく、かつては日常用と大差なかった形状も、現在では驚くほど特化しています。例えば、車輪を「ハの字」に傾けるキャンバー角の採用です。これにより、急旋回時の安定性が飛躍的に向上しました。また、後方に伸びる「リアキャスター」は、激しいストロークで後ろに重心がかかっても転倒を防ぐための重要な命綱です。こうした工夫の一つひとつが、コート上でのアグレッシブなプレーを可能にしている事実は見逃せません。

さらに陸上競技用では、マラソン時に時速50キロメートルを超えるスピードが出るため、極限の軽量化と剛性が求められます。同社は「カーボンファイバー(炭素繊維)」を用いた強化樹脂をフレームに導入しました。これは航空機などにも使われる非常に強靭で軽い素材です。さらに、車輪を回すための「ハンドリム」を薄く改良するなど、空気抵抗を1ミリでも減らす努力を続けています。こうした最先端素材の導入は、まさに技術の結晶と呼ぶに相応しいものです。

名選手からの信頼も絶大です。2008年北京、2012年ロンドンで連覇を果たした国枝慎吾選手など、数多くのスターを支えてきたのは安さんのような技術者でした。リオ大会で活躍した真田卓選手も「チーム全体でサポートしてくれるから安心してプレーできる」と語っています。車いすは単なる道具ではなく、選手の性格やプレースタイルまでを投影する鏡のような存在です。2020年の夏、最高の舞台で選手たちが輝く姿を見るのが今から待ちきれません。

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