2019年10月に東日本を襲った台風19号は、各地に未曾有の爪痕を残しました。さいたま市に拠点を構える株式会社タウには、発災直後から水没してしまった愛車の引き取りを願う相談が、損害保険会社などを通じて怒涛のように寄せられています。同社は過去の膨大なデータから、今回の水害による被災車両を約10万台と予測しました。これを受け、2019年11月13日現在、本社内に災害対策本部を設置し、100名を超える精鋭スタッフを現地へ急行させています。
被災地において、動かなくなった損害車両は復旧作業の大きな妨げになりかねません。タウが迅速な撤去と査定に動く背景には、街の再生を早めたいという強い使命感があります。SNS上でも「泥水に浸かった車をどうすればいいか途方に暮れていたが、専門業者が動いてくれて助かる」といった安堵の声が広がっているようです。エンジンが始動しない絶望的な状況でも、彼らは可能な限り高い買取価格を提示し、被災者の経済的・精神的な「二重ショック」を和らげる努力を続けています。
ここで言う「損害車」とは、事故や災害で損傷した車を指しますが、日本では一度壊れると価値がゼロだと思われがちです。しかし、修理技術の進歩や新興国の旺盛な需要により、部品や資源としての価値は十分に存在します。タウの強みは、世界100カ国以上の相場をリアルタイムで把握している点にあります。どの国で最も高く売れるかを熟知しているからこそ、日本の常識を超えた高値での買い取りが可能となり、それが巡り巡って愛車を失ったオーナーの支えとなるのでしょう。
世界119カ国を繋ぐ独自のオークション網と信頼の仕組み
タウの躍進を支えているのは、自社で開発したグローバルなオークションサイトです。日本語のみならず英語、ロシア語、スペイン語に対応したこのシステムには、世界119カ国、約12万社もの法人が会員として名を連ねています。年間約10万台という驚異的な取引量を誇り、物流コストを含めた価格設定をガラス張りにすることで、国内外の利用者から絶大な信頼を勝ち取りました。情報の透明性こそが、不透明になりがちな損害車ビジネスにおける最大の武器と言えます。
さらに2018年からは、単なるビジネスの枠を超えた「心の交流」を促すプロジェクトも始動しています。売却する側が車への感謝を綴り、購入する側がその後の車の様子や返事を届けるメッセージカードの交換は、顔の見えない取引に温かな体温を宿しました。私も、単に「モノ」として処理するのではなく、思い出を次の誰かへ繋ぐというこの姿勢は、中古車流通における理想的なホスピタリティの形ではないかと深く感銘を受けています。
社会貢献への意識も高く、2017年からは「願いのくるま」という活動を開始しました。これは外出が困難な終末期の患者さんを、思い出の地など希望の場所へ無料で送り届けるボランティアです。2019年9月期の決算では売上高283億円と過去最高を更新する見込みですが、その成長の根底には、宮本明岳社長が掲げる「モノを大切にする循環型社会」への情熱が流れています。損害車を資源として蘇らせる彼らの歩みは、これからの地球環境にとっても不可欠な存在となるはずです。
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