2019年11月14日現在、東京2020大会を巡る情勢は大きな転換点を迎えています。真夏の東京で懸念される記録的な猛暑を理由に、国際オリンピック委員会(IOC)はマラソンと競歩の開催地を、約800キロメートルも離れた札幌市へ変更することを電撃的に決定しました。
驚くべきことに、この重大な方針転換において東京都への事前相談は一切行われませんでした。小池百合子都知事は最後までこの決定に納得しなかったものの、最終的には「権限を持つIOCの決定を妨げない」という苦渋の決断を下し、この一方的な変更に従う形となったのです。
SNS上では「選手第一とはいえ、あまりに強引すぎる」「東京の準備は何だったのか」という困惑の声が溢れています。一方で、過酷な気象条件から選手を守るための英断だと評価する意見も一部で見られ、まさに国民を二分する大きな議論を巻き起こしていると言えるでしょう。
五輪憲章という名の「絶対的なルール」
通常、五輪の競技スケジュールや会場は、開催地の組織委員会が各競技の国際団体(IF)と協議した上でIOCに提案し、承認を受けるのが通例です。しかし、今回はすでに理事会が承認していた内容をIOCが独断で覆したという点で、極めて異例の事態が起きています。
ここで鍵となるのが、五輪運営の最高法規である「五輪憲章」の存在です。この憲章には、解決が困難な問題が生じた際の最終決定権はすべてIOC理事会に帰属すると明記されています。開催都市はIOCとこの憲章を順守する契約を結ぶため、逆らうことは事実上不可能です。
専門用語で「ホストシティ・コントラクト(開催都市契約)」と呼ばれるこの契約は、IOCに圧倒的な優位性を与えています。私は、この強権的な体質こそが、近年の世界的な「五輪離れ」を加速させている最大の要因ではないかと強く感じてやみません。
札幌招致とIOCの強気な姿勢
現在、IOCの姿勢に批判が集まる一方で、彼らが強引な判断を崩さない背景には冷静な計算も見え隠れします。実は2028年のロサンゼルス大会まで開催地は既に決定済みであり、IOCにとって「代わりの開催地がいない」という危機感が薄れているのが現状です。
さらに興味深いことに、今回の移転先となった札幌市は、2030年の冬季五輪招致に意欲を示しています。IOCからすれば、自分たちの決定を柔軟に受け入れる都市が控えている状況が、強気な交渉態度をさらに助長させている側面は否定できないでしょう。
スポーツの祭典であるはずの五輪が、主催者の独裁的な力によって左右される現状には疑問を禁じ得ません。開催都市の主権とアスリートの安全、そしてIOCの権限がどのようなバランスを保つべきか、今まさに私たちはその正念場に立ち会っているのです。
コメント