日本の教育現場は今、かつてない大きな転換期を迎えています。少子高齢化の波は容赦なく押し寄せ、大学経営を揺るがしているのです。文部科学省の予測によれば、2018年に118万人だった18歳人口は、2032年には100万人を割り込み、2040年には88万人まで減少するとされています。この衝撃的な数字は、2018年比で約25%もの減少を意味しており、大学側には抜本的な改革が求められているのでしょう。
こうした厳しい情勢の中、小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学の国立3大学は、2022年の運営法人統合に向けて大きく舵を切りました。2019年11月15日、小樽商科大学の和田健夫学長は、この挑戦的な決断の背景を熱く語ってくださいました。単なる生き残りではなく、個々の大学が持つ専門性を掛け合わせる「総合力」こそが、これからの時代に価値を生む鍵となるはずです。
SNS上では、この異色とも言える文理融合の統合に対し、「北海道の教育が変わるかもしれない」「遠隔授業の質がどこまで上がるか期待したい」といったポジティブな声が広がっています。異なる強みを持つ大学が手を取り合うことで、従来の枠組みを超えた新しい学びの形が生まれることへの期待感が高まっているようです。単科大学という「一点突破」の強みを維持しつつ、組織としての規模を拡大する手法は、地方大学の理想的なモデルケースとなるでしょう。
教員交流から生まれる「学際的」な学びの可能性
統合合意から約1年半が経過した現在、3大学では教育、研究、そして遠隔教育の3分野で作業部会が組織され、着々と準備が進められています。和田学長によれば、まず教員同士の交流が活性化したことで、専門領域を超えた相互理解が深まったことは大きな収穫だったとのことです。当初は既存科目を組み合わせる構想でしたが、現在はさらに一歩踏み込み、複数の学問分野にまたがる「学際的(がくさいてき)」な新科目の創出を目指しています。
「学際的」とは、例えば経済学と農学、あるいは工学といった異なる学問を融合させ、新たな視点で問題解決を図るアプローチを指します。商学のプロと畜産、工業の専門家が知恵を絞ることで、これまでにないユニークな講義が誕生するのは間違いありません。試行錯誤の真っ只中ではありますが、この「混ざり合う力」こそが、学生にとっての大きな付加価値になるに違いありません。
しかし、物理的な距離という壁が大きな課題として立ちはだかります。小樽、帯広、北見と離れた場所にあるキャンパスをどう繋ぐのか、その答えとして期待されているのが「遠隔教育」の導入です。これはカメラやマイク、インターネットを活用して離れた場所でもリアルタイムで講義を受ける仕組みですが、単に映像を流すだけでは不十分だと和田学長は指摘されています。
和田学長が最も重視しているのは、あくまで「学生ファースト」の視点です。学生が満足し、教育効果を最大限に高めるための手法を確立しなければ、どんなに素晴らしいカリキュラムも宝の持ち腐れになってしまいます。遠隔授業の技術的なハードルを越え、対面授業に劣らない、あるいはそれを超える没入感のある学びを提供できるかどうかが、統合成功の分水嶺となるでしょう。
私自身の見解としても、この3大学統合は地方創生の観点から極めて重要だと感じます。地方大学が個別に縮小するのではなく、法人の統合によって経営基盤を強固にし、リソースを共有することは、教育の質を保つための最適解だと言えるでしょう。2022年の統合に向けて加速する北海道の教育革命から、今後も目が離せません。
コメント