【外交の秘蔵品】藤崎一郎氏が語る「チャレンジ・コイン」の絆と大統領メダル収集の舞台裏

外交官という職業は、宿命的に数多くの引っ越しを伴うものです。そのため、日米協会会長を務める藤崎一郎氏は、長らく物を持たない生活を信条としてきました。しかし、2019年11月20日現在、そんな彼が例外的に大切にしているコレクションがあります。それは、最後の赴任地となった米国で手にした、色鮮やかな「チャレンジ・コイン」や歴史の重みを感じさせる記念メダルの数々です。

「チャレンジ・コイン」とは、米軍の文化に深く根付いた直径4~5センチほどの金属製の硬貨を指します。表面には部隊の紋章や個人の名前が刻まれており、一種の身分証明や連帯の証として機能してきました。ユニークなのはその渡し方で、握手をする際に手のひらに忍ばせ、相手にそっと移すのが作法だそうです。遊び心に溢れた、実に粋なコミュニケーションツールと言えるでしょう。

このコインには、持ち歩いていない者が相手にビールを奢るという、軍隊らしい愉快なルールも存在します。藤崎氏の手元には、オバマ大統領やバイデン副大統領、さらには「シュワちゃん」ことシュワルツェネッガー元州知事ゆかりの品まで並んでいます。SNS上でも「大統領から直接コインを受け取るなんて、外交の最前線は映画のような世界だ」と、その希少性に驚きの声が上がっています。

スポンサーリンク

オークションで競り落とした歴代大統領の記憶

藤崎氏の情熱は、軍のコインに留まりません。彼は20世紀初頭からの歴代米国大統領の就任記念メダルを、自らの手で収集してきました。入手経路は多岐にわたり、実際の競売やインターネットオークションを駆使したといいます。中には締め切り間際に入札を仕掛けるプロの巧妙な手口に直面することもあり、まさに外交さながらの駆け引きを繰り広げながらコレクションを築き上げました。

メダルの発行枚数は記録に残されており、中には数十枚しか存在しないような伝説的な珍品も存在します。昔のメダルはサイズが統一されていなかったため、藤崎氏は米国の木工ショップに特注の木枠を発注しました。1枚ずつ丁寧に計測して作られたその専用ケースは、離任直前にようやく完成したそうです。こうした細部へのこだわりからは、歴史を形として残そうとする執念と深い敬愛の念が伝わってきます。

さらに氏は、受け取るだけでなく、自らもメダルを制作する側に回りました。駐米大使時代や日米協会、上智大学など、自身の歩みに合わせて独自のメダルをデザインしています。これは講演の謝礼や学生への賞品として贈られており、「他にはないユニークな贈り物」として大変喜ばれているそうです。かさばらず、かつ唯一無二の価値を持つメダルは、まさに「縁」を繋ぐ最高の外交ツールなのかもしれません。

私たちが日常で手にする硬貨とは異なり、これらのメダルには物語が詰まっています。デジタル化が進む現代だからこそ、手のひらに伝わる金属の質感や重みを通じて、人と人との信頼関係を再確認する藤崎氏の姿勢には深く共感します。物を持たない主義を貫いてきた外交官が、最後に手元に残したのが「絆の象徴」であったという事実は、実に感慨深いエピソードではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました