市川猿之助が語る究極の美食体験!出羽三山の過酷な旅路で出会った「人生最高の胡麻豆腐」とは

美食を極めた著名人が「これまでで最も美味しかった一皿は何か」と問われる場面は多いものです。歌舞伎俳優の市川猿之助さんも、国内外の数多くの名店を訪れてきた経験をお持ちですが、その質問に対して迷わず挙げる一品があります。それは、山形県の霊場として知られる出羽三山の麓で出会った、至高の「胡麻(ごま)豆腐」なのだそうです。

その味に至るまでの物語は、大学時代の夏に遡ります。2019年11月17日の独白によれば、猿之助さんは友人に誘われるまま、上野駅から夜行列車に乗り込みました。当時は現在のようにスマートフォンで手軽に検索できる時代ではありません。MDプレーヤーでお気に入りの曲を聴きながら、未知の土地へ向かう高揚感に包まれていた当時の様子が目に浮かぶようです。

目的地である出羽三山は、羽黒山・月山・湯殿山の三つの山を指し、古くから修験道(しゅげんどう)の聖地として信仰を集めてきました。修験道とは、厳しい大自然の中での修行を通じて悟りを開こうとする日本独自の宗教形態です。そんな厳格な場所へ、猿之助さんは驚くほどの軽装で足を踏み入れたというから、その大胆さには驚かされてしまいますね。

「月の山」という幻想的な名前に惹かれた猿之助さんは、標高の高い月山を目指しました。バスを降りた直後は尾瀬のような穏やかな湿原風景が広がっていましたが、山頂に近づくにつれて状況は一変します。雲が視界を遮り、冷たい風が薄着の身体を容赦なく打ち据える過酷な環境へと変わっていきました。周囲が重装備の登山客ばかりの中、まさに命がけの登山となったのです。

山頂付近の小屋で口にしたトマトジュースで辛うじて息を吹き返し、なんとか無事に下山を果たした猿之助さん。湯殿山の神聖な湯に足を浸し、心身の疲れを癒した後の眠りは、まさに溶けるような深いものだったに違いありません。極限状態を乗り越えた達成感と、神聖な空気感に包まれたこの旅は、若き日の彼にとって忘れられない試練となりました。

運命の胡麻豆腐に出会ったのは、その翌朝のことでした。羽黒山の麓にある宿で供された朝食。過酷な登山を終えた身体に、滋味深い胡麻の風味が染み渡った瞬間、それは「人生最高の料理」へと昇華されたのです。空腹や疲労という最高の調味料があったとはいえ、その土地の歴史や信仰が育んだ本物の味が、多忙な俳優の心を深く揺さぶったのでしょう。

このエピソードに対し、SNSでは「極限状態での食事は一生忘れないもの」「出羽三山の空気感を含めての味なのだろう」といった共感の声が多く寄せられています。情報の海に溺れがちな現代において、あえて「何も知らない」状態で飛び込み、体当たりで得た感動こそが、真の贅沢と言えるのではないでしょうか。猿之助さんの語る胡麻豆腐の味は、私たちの想像を掻き立てます。

華やかな舞台に立つ歌舞伎俳優が、豪華なディナーではなく、修行の地の素朴な一品を「最高」と称する点に、彼の審美眼の深さを感じずにはいられません。美味しいものとは、単に高価な食材を使っていることではなく、その瞬間の記憶や風景と分かちがたく結びついているものなのですね。皆様も、人生を彩るような「忘れられない一食」を探す旅に出たくなったのではないでしょうか。

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