世界最大の自動車市場として君臨する中国が、いかなるビジョンを持って「自動車強国」への道を突き進んでいるのか、その核心に迫る一冊が登場しました。2019年11月30日に日本経済新聞出版社から刊行された湯進氏の著書『2030 中国自動車強国への戦略』は、巷に溢れる伝聞形式の情報とは一線を画す圧倒的なリアリティを放っています。
本書の最大の白眉は、世界の自動車産業を揺るがす中国の巨大電池メーカーに関する独占的な記述でしょう。通常、メディアの前に姿を見せることが極めて稀とされる創業経営者との接触に成功し、さらに厳重に管理された施設内部の調査まで許可された事実は、著者の深い人脈と粘り強い取材力の賜物と言えます。
現場主義が明かす次世代エネルギーの核心
ネット上では「中国製EV(電気自動車)の実力は未知数だ」という慎重な意見も散見されますが、本書で詳述される現場の熱量は、そうした懐疑論を払拭するほどの説得力を持っています。SNSでも、実際に中国各地を歩いて得た一次情報の質の高さに対し、「現地の生の声がこれほど詰まった資料は他にない」と驚きの声が上がりました。
ここで解説しておきたいのが、中国政府が推進する「CASE」への対応戦略です。これはConnected(接続)、Autonomous(自動運転)、Shared(共有)、Electric(電動化)の頭文字を取った概念ですが、中国当局はこの四要素を国家戦略の柱に据え、官民一体となって強引なまでのスピードで社会実装を進めている様子が伺えます。
編集者としての私見を述べれば、現在の中国の動きは単なる産業振興の域を超え、世界のモビリティ・インフラの規格を塗り替えようとする「野心」そのものです。日本のメーカーが誇るモノづくりの精神が、この巨大なデジタル資本主義の波にどう対抗し、あるいは共存していくべきかを考える上で、避けては通れない必読の書となるでしょう。
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