囲碁界の絶対王者として君臨する井山裕太王座に、史上最年少名人の記録を塗り替えた超新星・芝野虎丸名人が挑む、第67期王座戦五番勝負。まさに新旧スターの激突となったこのシリーズは、現在1勝1敗のタイとなっており、勝負の行方を占う重要な第3局が2019年11月18日、山梨県甲府市の名門・常磐ホテルで幕を開けました。
静寂に包まれた対局室には、午前9時56分に芝野名人が先に姿を現しました。白い手拭いで丁寧に碁盤を清める姿からは、一局にかける並々ならぬ決意が伺えます。その直後に井山王座も入室し、午前10時、伝説の棋士・武宮正樹九段の合図によって、3時間という限られた持ち時間の中で繰り広げられる知略の戦いがスタートしたのです。
本局は芝野名人の先番(黒番)で進行し、序盤から挑戦者らしい独創的な工夫が見られました。左上での打ち進め方に独自の構想を込めた芝野名人に対し、井山王座も相手の理想形を許さない強気な応手で対抗します。盤上の至る所で火花が散る展開に、SNS上では「一歩も引かない姿勢が格好いい」「若き才能と絶対王者の意地のぶつかり合いだ」と、ファンの熱狂的な声が相次いでいます。
解説を務める高尾紳路九段は、この序盤戦を「善悪の判断を超えた、互いのプライドのぶつかり合い」と評しています。囲碁には「形」や「定石」といったセオリーがありますが、現在の二人はそうした枠組みを飛び越え、精神的な優位を勝ち取るための真剣勝負を繰り広げているようです。一見すると静かな長期戦の構えですが、水面下では激しい読みの応酬が続いています。
私が注目しているのは、20歳の芝野名人が見せる驚異的な冷静さと、30歳にしてなお進化を続ける井山王座のハングリー精神です。AIの普及により囲碁の戦術は均一化されつつありますが、このように個性が激しく火花を散らす対局こそが、観る者の心を揺さぶるのでしょう。勝利の女神がどちらに微笑むのか、盤上から片時も目が離せない時間がこれからも続いていきそうです。
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