香港情勢がいよいよ予断を許さない局面に突入していると言えるでしょう。2019年11月12日も各地で激しい抗議活動が繰り広げられ、かつてないほどの混乱に包まれました。特に衝撃を与えたのは、警察当局が若者たちの抗議拠点となっていた香港中文大学のキャンパスへと強行突入した出来事です。火の手が上がり、レンガが散乱する大学内の惨状はSNSでも瞬く間に拡散され、「まるで戦場のようだ」「学生たちの安全が心配だ」といった悲痛な声が世界中から殺到しています。
同日の昼下がりには、アジア屈指の金融街である中環(セントラル)にも黒ずくめの集団が出現したのです。驚くべきことに、普段はビジネスの最前線で働くスーツ姿の会社員たちも次々と列に加わりました。彼らは高級ブランド店が軒を連ねる通りで、交通機関を麻痺させるなどの抗議行動を展開しています。若者だけでなく、幅広い世代や職業の市民が参加している事実から、香港社会全体に深く根を張る危機感が見て取れるのではないでしょうか。
立ちはだかる巨大な壁と五大訴求
参加者たちが口々に叫んでいたのは「五大訴求、一つも譲らない」という悲痛なスローガンでした。この「五大訴求」とは、逃亡犯条例改正案の完全撤回、デモ隊の「暴徒」認定取り消し、逮捕者の釈放、警察の暴力を調べる独立調査委員会の設置、そして普通選挙の実現という5つの要求を指す言葉です。改正案こそ撤回されたものの、警察の過剰な実力行使に対する市民の怒りは凄まじく、残り4つの要求が満たされない限り、彼らの怒りが鎮まることはないはずです。
これに対して、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、明確に拒絶の意思を示しました。2019年9月の時点では市民との対話集会を開くなど、歩み寄りの姿勢も見せていた林鄭氏ですが、状況は一変しています。最大の転機となったのは、2019年11月4日に行われた中国の習近平国家主席との会談にほかなりません。このトップ会談を境に、香港政府は再び力による封じ込めへと舵を切ったと思えてなりません。
民主主義の試金石となる区議会選挙
中国本土からも、さらなる強硬手段を推奨するかのような不気味なメッセージが発信され続けている状況です。治安部門を束ねる中央政法委員会は、2019年11月11日深夜にSNS上で香港警察の実弾使用を正当化する論評を発表しました。さらに、共産党機関紙系のメディアも、背後には人民解放軍などの強力な武装部隊が控えていると公然と威嚇を行っています。このような大国の圧力は、事態の平和的解決を遠ざける危険な劇薬と言わざるを得ないでしょう。
この混乱の先にある最大の焦点は、2019年11月24日に投開票が予定されている香港区議会選挙の行方になります。この選挙は、香港の全有権者が1人1票を投じる「普通選挙」の形式をとっており、現在の民意を測る事実上の国民投票としての意味合いを持っているのです。しかし、社会情勢の悪化を理由に、政府が選挙の延期に踏み切るのではないかという観測も消えていません。
私は一人のメディア編集者として、いかなる理由があろうとも、民主主義の根幹である選挙の機会を奪うべきではないと強く主張したいと考えます。有権者の正当な声を封じ込めることは、火に油を注ぐ結果にしかなりません。暴力の連鎖を断ち切り、真の解決の糸口を見つけるためには、武力による弾圧ではなく対話のテーブルに着くこと、そして民意を反映させる公正な選挙の実施が不可欠だと確信してやみません。
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