佐賀県鹿島市に鎮座し、日本三大稲荷の一つとして名高い「祐徳稲荷神社」がいま、タイからの訪日観光客で熱く盛り上がっています。2014年から2015年にかけて、タイの映画やドラマのロケ地に選ばれたことがきっかけとなり、現地では憧れの「聖地」として定着しました。美しい朱塗りの社殿を背景に、異国の地から訪れたファンが笑顔でシャッターを切る姿は、今やこの地の日常的な光景となっています。
この盛り上がりを影で支えているのが、佐賀県在住のタイ人と現地のタイ愛好家を結ぶ任意団体「サワディー佐賀」です。代表世話人を務める山路健造さんは、2018年から同神社へタイ語通訳のボランティア派遣を開始しました。SNS上でも「言葉が通じて安心して参拝できた」「ドラマの世界に浸れた」と喜びの声が広がっており、草の根の活動が大きな反響を呼んでいます。
孤独な留学生を救いたい!ネットワーク構築への想い
山路さんが「サワディー佐賀」を立ち上げた背景には、2017年に開催されたタイ関連イベントでの気づきがありました。佐賀大学や西九州大学に通うタイ人留学生たちが、互いの存在を知らずに孤立している現状を目の当たりにしたのです。異国の地で頼れる仲間がいない心細さは、計り知れません。山路さんは彼らのネットワークを構築し、困りごとを相談し合える環境作りに奔走しました。
現在は、タイ料理を通じた地域交流イベントの企画や日本人向けのタイ語教室など、多角的な活動を展開しています。こうした活動は、単なる観光支援に留まらず、多文化共生社会を実現するための重要なステップだと言えるでしょう。私個人としても、言葉の壁を越えた心の交流こそが、真のインバウンド振興に繋がると確信しており、山路さんの行動力には深い敬意を表します。
聖地巡礼を彩る「おもてなし」の精神
2018年6月には祐徳稲荷神社と正式に覚書を交わし、本格的な通訳ガイドをスタートさせました。個人旅行客をターゲットに、神社の正しい参拝方法やドラマの撮影ポイントを丁寧に解説しています。インバウンドとは「外から中へ」という意味で、訪日外国人旅行客を指す言葉ですが、山路さんの活動はまさに彼らの心に寄り添う、日本らしいホスピタリティの体現です。
さらに、自作のパンフレットを2019年12月03日現在もJR佐賀駅などで配布し、周知に努めています。過去の経験から、観光客が集中する春秋に派遣を増やすなど、柔軟な運営を行っている点も特筆すべきでしょう。現在は派遣回数をさらに増やすため、協力者を募っているとのことです。自分一人の利益ではなく、地域と海外ゲスト双方の幸せを願う姿勢は、これからの観光業の模範となります。
自らの経験を糧に広がる未来のビジョン
山路さんの原動力は、かつてフィリピンで有機農業支援に従事していた際の苦い経験にあります。政治的混乱の中で活動が停滞したとき、彼を支えたのは日本の仲間との母国語による対話でした。この「母国語で相談できる安心感」こそが、現在の活動の根幹となっています。2019年11月現在、佐賀県内には約80人のタイ人が暮らしていますが、山路さんの目はさらに先を見据えています。
現在、県内で最も多い外国人居住者は約1700人を数えるベトナム人の方々です。山路さんは、タイで培ったこのネットワークを将来的にベトナム人コミュニティにも広げたいという夢を持っています。ひとつの成功事例を横に展開していく姿勢は、地方創生における素晴らしい戦略です。佐賀が「国籍を問わず誰もが輝ける場所」になる日は、そう遠くないでしょう。
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