日本の農林水産業を次世代へとつなぐべく設立された官民ファンド、農林漁業成長産業化支援機構(通称:A-FIVE)がいま、大きな岐路に立たされています。2019年11月19日に行われた閣議後記者会見において、江藤拓農林水産大臣は今年度の投資目標達成について「ほぼ無理だ」と極めて厳しい見通しを明らかにしました。期待を背負ってスタートしたはずのプロジェクトが、なぜここまで苦戦を強いられているのでしょうか。
今年度の具体的な数字を見ると、その深刻さが浮き彫りになります。A-FIVEは2019年度に110億円という投資目標を掲げていましたが、2019年4月1日から2019年9月30日までの上半期実績はわずか16億円にとどまりました。目標の15%にも満たないこの現状に対し、江藤農相はファンドの存在意義そのものを問うような「抜本的に見直す」という強い言葉を使い、今後の運営方針を再検討する姿勢を鮮明に打ち出したのです。
SNS上では、この発表を受けて「血税を投入している以上、見極めは必要だ」という厳しい声が上がる一方で、「農業の多角化には時間がかかるため、短期的な数字だけで判断するのは酷ではないか」といった慎重な意見も散見されます。投資の世界では結果がすべてという側面もありますが、現場の農家の方々からは、公的な支援が途絶えることへの不安も漏れ聞こえてくるのが現状といえるでしょう。
小規模投資のジレンマと今後の展望
A-FIVEが抱える構造的な問題として、1件あたりの出資額が平均約1億1000万円と非常に小規模であることが挙げられます。そもそもこのファンドは、農家が生産だけでなく加工や販売まで手掛ける「6次産業化」を支援する目的で設立されました。しかし、少額の投資案件を多数抱えることは、審査や管理にかかる運営コストが利益を圧迫するという、ビジネスモデル上の矛盾を生んでしまったようです。
ここでいう「6次産業化」とは、1次産業(生産)、2次産業(加工)、3次産業(流通・販売)を掛け合わせることで、農林水産業に高い付加価値を生み出そうとする取り組みを指します。農水省は現在、この対象範囲をさらに広げることで新たな案件の発掘を急いでいますが、効率的な資金運用と地域支援の両立は決して容易ではありません。民間企業のようなスピード感と、公的機関としての慎重さのバランスをどう取るかが鍵となります。
編集者としての私見ですが、官民ファンドは単なる金銭的援助に留まらず、経営のプロを現場に送り込むような「伴走型支援」をより強化すべきではないかと感じます。農業は日本の基盤であり、失敗を恐れて支援を止めてしまえば、地方の活力は失われていくでしょう。今回の江藤農相による厳しい指摘が、単なる縮小への足掛かりではなく、より実効性の高い「真の支援」へと生まれ変わるための健全な危機感として機能することを切に願います。
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