2019年12月2日、米国のドナルド・トランプ大統領が自身のツイッターを通じて、ブラジルとアルゼンチンから輸入される鉄鋼およびアルミニウムに対し、即座に追加関税を課す方針を表明しました。この突然の発表は、南米の両国が自国の通貨価値を意図的に下げる「通貨切り下げ」を行い、米国の農家や製造業に不利益を与えているという強い不満が背景にあります。トランプ大統領の強硬な姿勢は、大統領選を控えた国内向けのパフォーマンスという側面も否定できず、国際社会に大きな波紋を広げています。
SNS上では、この突然の通告に対し「予測不能な外交がまた始まった」「同盟国に近いブラジルまで標的にするのか」といった驚きの声が相次いでいます。特に、対中貿易摩擦で苦しむ米国の農家を支援したいという大統領の意図は明確ですが、一方で自由貿易の原則を揺るがす動きには、世界中の投資家からも懸念の視線が注がれているようです。市場では通貨の動きが政治的な武器として扱われることへの警戒感が一気に高まっており、今後のドミノ倒し的な関税合戦を危惧する投稿も目立ちます。
通貨切り下げが引き金に?トランプ氏が抱く「強いドル」への苛立ち
今回、トランプ大統領が問題視している「通貨切り下げ」とは、一国が他国に対して自国通貨の価値を意図的に引き下げることを指します。これにより、その国の輸出製品は海外で安く売れるようになり価格競争力が増しますが、逆に米国側からすれば、安価な輸入品が流入して自国の産業が圧迫されることになります。2019年に入り、ブラジルのレアルは約1割、アルゼンチンのペソに至っては約4割も対ドルで下落しており、この状況を大統領は「米国の利益が侵害されている」と断じているのです。
大統領の怒りの矛先は、身内の米連邦準備理事会(FRB)にも向けられました。FRBとは米国の準備銀行、つまり中央銀行にあたる機関で、金利の操作などを通じて経済の安定を担っています。トランプ大統領は、諸外国が「強いドル」を利用して利益を得るのを防ぐため、FRBも利下げを行ってドル安へと誘導すべきだと改めて要求しました。政治が中央銀行の独立性に踏み込むこの発言は、経済の専門家たちの間でも極めて異例な事態として捉えられています。
個人的な見解を述べさせていただくと、トランプ政権のこうした「ディール(取引)」を前提とした強引な外交手法は、短期的には米国内の支持層を喜ばせるかもしれません。しかし、長期的には国際的なサプライチェーンを分断し、結果として米国の消費者も物価高という形で代償を払うことになるのではないでしょうか。特にブラジルは、中国との貿易戦争で米国産大豆が売れなくなった隙間を埋める形で対中輸出を伸ばしており、今回の措置には多分に「見せしめ」のような意図も感じられます。
揺れる南米諸国と今後の展望
突然の標的となったブラジルのボルソナロ大統領は、2019年12月2日の段階で「必要ならトランプ氏と直接話す用意がある」と柔軟な姿勢を見せています。彼は自身を「ブラジルのトランプ」と称するほど親密な関係を築いてきただけに、今回の関税復活は手痛い裏切りとも言えるでしょう。一方、アルゼンチン政府も緊急会合を開き、米商務省との協議を急いでいますが、国内の財政不安を抱える中でこの関税措置が強行されれば、経済へのダメージは計り知れません。
2018年3月から始まった鉄鋼・アルミへの追加関税は、当初25%と10%という高い税率でスタートしましたが、南米両国は数量制限を受け入れることで免除を勝ち取っていました。しかし、今回の決定でその特別待遇も「直ちに」終了することになります。2019年1月から9月期の統計では、ブラジルからの鉄鋼輸入量は前年比で1割も増えており、米国の鉄鋼大手からすれば追い風に見えるかもしれませんが、製造コストの上昇を招くリスクも孕んでいます。今後の協議の行方に、世界中の視線が注がれています。
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