2019年11月10日、上海で開催された第2回中国国際輸入博覧会が幕を閉じました。習近平国家主席が市場開放をアピールする国家プロジェクトとして始まったこのイベントは、中国企業による成約意向額が711億ドル(約7兆7000億円)という驚異的な数字にまで膨れ上がっています。
巨額の取引が飛び交う華やかなステージの一方で、会場には米中貿易摩擦の深刻な影が色濃く落とされていました。特に「ハイテクの心臓」とも言える半導体分野では、主要企業の出展が極端に少なく、実需に沸く医療分野とは対照的な静けさが漂っていたのが印象的です。
SNS上では「これほど露骨に分野別の温度差が出るとは」といった驚きの声や、「意向額はあくまで希望に過ぎないのでは」と、その実効性を疑問視する冷ややかな反応も散見されました。国家のメンツと実利が交錯する中、複雑な国際情勢が透けて見える結果となったようです。
摩擦を避ける医療分野と口を閉ざす半導体大手
そんな中、熱気に包まれていたのが米ゼネラル・エレクトリック(GE)のブースです。2019年11月7日には、貴州省の担当者が最新のコンピューター断層撮影装置(CT)を熱心に見つめていました。このCTとは、X線を使って体の断面を画像化する高度な診断装置を指します。
GE幹部が「ヘルスケアは摩擦の影響を受けない数少ない領域」と語る通り、人命に関わる医療技術は政治の嵐を免れている様子です。対照的に、米クアルコムは次世代通信規格「5G」を掲げながらも、ファーウェイ制裁などの影響により、担当者の説明には慎重さが際立っていました。
消えた製造装置と日本企業の冷めた視線
顕著だったのは、半導体製造装置メーカーの不在です。アプライドマテリアルズなど米欧の大手企業が参加を見送った事実は、先端技術の輸出管理が厳格化する現状を如実に物語っています。専門展示会ではないという側面もありますが、米中の対立を背景とした「忖度」があるのは明白でしょう。
日本企業も、出展社数が前回から約100社減少しました。「成約の意向を示されても、実際の契約に繋がるまで時間がかかりすぎる」といった現場の本音が、形式的な出展を控える動きに繋がったようです。熱狂を演出しようとする主催者側と、冷ややかな実利重視の企業側という構図が見て取れます。
編集者の視点から言えば、政治が市場を強引に牽引する手法には限界が見え始めています。習主席が鳴り物入りで開設した株式市場「科創板」でも公募価格割れが起きている通り、真の需要は「号令」ではなく自由な市場取引からしか生まれないという教訓を、今回の博覧会は示唆しているようです。
コメント