鹿児島市に本拠を置く業務用食品卸の大手、西原商会が今、事業承継を目的としたM&A(企業の合併・買収)で大きな注目を集めています。2019年12月05日現在、すでに19件もの案件を手掛けており、その勢いはとどまるところを知りません。連結売上高1000億円という大きな節目を目前に控え、西原一将社長が語る戦略の核心に迫ります。
西原社長が買収先を選定する際に最も重視しているのは、単なる利益の追求や相乗効果だけではありません。それ以上に、自社が持つ営業体制などのリソースを投入することで、その企業を改善し、守り抜くことができるかを厳しく判断されています。たとえ専門外の分野であっても、自分たちの手で再生させるという強い責任感がそこにはあります。
ネット上では「地方の美味しいものが消えずに済むのは嬉しい」「M&Aが救済の手段になっている」といった好意的な声が多く寄せられています。近年、深刻な社会問題となっている後継者不足に対し、西原商会のような企業が受け皿となることは、地域の雇用を守るという観点からも非常に意義深い活動であると言えるでしょう。
食文化と観光を支える「地場の力」を次世代へ
日本の食には、その土地ならではの産地があり、独自の食文化が息づいています。西原社長は、これらが観光資源としての魅力にも直結していると説きます。もし地場の食品メーカーが途絶えてしまえば、その地域の観光や食文化そのものが損なわれてしまうという危機感を、社長は常に抱きながら事業に邁進されています。
外食産業によって育てられてきた自負があるからこそ、自分たちが引き受けられるものであれば、少しでも多くの「食」を残していきたいという利他の精神が感じられます。単なるビジネスの拡大ではなく、日本の伝統を守るという文化的な使命感が、同社のM&A戦略の根底に流れているのではないでしょうか。
かつて福岡県のプリンメーカーを買収した際、本業とは遠い市販向けスイーツという領域に苦戦しながらも、5、6年かけて黒字化させた成功体験が現在の自信に繋がっています。M&Aを繰り返す中で、現場の社員もノウハウを蓄積し、今では食品工場を再建できるほどの人材が育っているという点は、企業として極めて強固な武器になっています。
1000億円企業の先に見据える人材と効率化の課題
売上高1000億円という数字について、西原社長はあくまで「通過点」に過ぎないと冷静に捉えています。インフラや社内体制、そして何より人材が成長していく過程での一つの指標に過ぎないという考え方です。急成長を遂げる中で、守りに入ることなく攻めの姿勢を崩さないリーダーシップが印象的です。
2020年03月には隣接地への本社移転を控えていますが、最大の課題はやはり人材の確保にあります。業務用食品卸という業態において、売上を伸ばすためには配送トラックを動かすマンパワーが不可欠です。同社は10年も前から採用強化に動いてきましたが、今後はさらなる労働環境の改善と業務の効率化が求められています。
編集者の視点から見ても、西原商会の取り組みは「持続可能な地域社会」を実現するための理想的なモデルケースだと感じます。労働人口が減少する中で、いかにして社員が働きやすい環境を構築し、付加価値の高いサービスを提供し続けるか。この挑戦こそが、1000億円の先にある真の成功を左右する鍵となるはずです。
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