2020年の米大統領選挙が刻一刻と近づくなか、トランプ政権の経済手腕を巡る評価がアメリカ国内で激しく火花を散らしています。英フィナンシャル・タイムズと米ピーター・G・ピーターソン財団が2019年11月19日から2019年11月24日にかけて実施した最新の共同世論調査では、支持政党によって国民の視線が驚くほど真っ二つに分かれている現状が浮き彫りとなりました。SNS上でも「景気の恩恵を実感している」という声と「生活は苦しくなる一方だ」という悲鳴が入り乱れ、まさに混沌とした状況が続いています。
具体的な数字を見ていくと、共和党支持層の実に81%がトランプ政権の政策を「経済に貢献した」と手放しで称賛しています。対照的に、民主党支持層で同様の回答をしたのはわずか12%に留まり、逆に78%もの人々が「経済を悪化させた」と断じています。この極端なコントラストは、アメリカという国家が今、トランプ氏への忠誠心によって社会のあり方そのものが分断されている事実を雄弁に物語っているといえるでしょう。
国民の「暮らし向き」に関する実感も、政党への帰属意識に強く支配されています。共和党支持者の61%が「生活が改善した」と自信を見せる一方で、民主党側でそう答えたのはたったの8%に過ぎません。メディア編集者の視点から見れば、もはや客観的な経済指標よりも「自分がどの陣営に属しているか」という感情的なフィルターが、個々人の景況感を決定づけている危うさを感じずにはいられません。
株高の恩恵は届いているか?見え隠れする格差の壁
トランプ大統領は、2019年11月末に最高値を更新した米株式市場の活況を自身の大きな実績としてアピールしています。しかし、今回の調査では非常に興味深い事実が判明しました。米国民の約61%が、株高による家計への影響は「ほとんどない」あるいは「全くない」と回答しているのです。ニューヨーク・ダウがどれほど上昇しようとも、その恩恵を肌で感じているのは「大きな影響がある」と答えた39%の層、つまり一部の富裕層や投資家に限られているのが現実のようです。
また、国民が今最も恐れているのは、トランプ氏が対決姿勢を強める中国との「貿易戦争」ではありませんでした。今回の調査で経済への最大脅威として首位に躍り出たのは、28%を占めた「医療費の上昇」です。貿易摩擦によるコスト増よりも、日々の暮らしに直結する医療コストの暴騰こそが、米国民のリアルな不安の種となっている事実は見逃せません。民主党候補による「国民皆保険」の議論が活発化していることも、この不安をより鮮明にしている一因でしょう。
ここで注目すべきは、大統領選の勝敗を握る「スイング・ステート(激戦州)」の動向です。フロリダ州やペンシルベニア州といった11の激戦州では、暮らし向きが「改善した」との回答が37%に達し、全米平均を5ポイントも上回りました。2016年の前回選挙でトランプ氏が勝利を収めたこれらの地域では、依然として現政権への期待が根強く残っています。この「激戦州での強さ」が、2020年の再選に向けたトランプ氏の最大の武器になることは間違いありません。
一方で、2019年12月現在、米政界を揺るがしている「ウクライナ疑惑」に伴う弾劾調査については、世論への影響は限定的とみられます。職権乱用の疑いが報じられながらも、経済政策への評価に大きな変動がない点は、トランプ氏の支持基盤がいかに強固であるかを示唆しています。しかし、公的債務の増大に対して64%が「誤った方向だ」と懸念を示している点は、今後の政権運営における大きな火種となる予感がしてなりません。
アメリカは今、戦後最長となる景気拡大のなかにありますが、その内実は非常に脆い均衡の上に成り立っているように見えます。支持政党による「心の壁」が、経済という共通の物差しすらも機能不全に陥らせている現状を、私たちは注視していく必要があるでしょう。一握りの成功と多くの不安が同居するこの超大国の行方が、2020年の決戦に向けてどのようなドラマを描くのか、目が離せません。
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