2019年12月6日、百貨店大手5社が発表した11月の売上速報は、業界全体に漂う厳しい空気感を浮き彫りにしました。既存店ベースの数字を見ると、なんと全社が前年同月の実績を下回るという、苦しい結果になっています。10月に実施された消費増税に伴う駆け込み需要の反動は、いまだに尾を引いているようです。
前回の増税時と比較しても、今回の需要回復は非常に緩やかであると三越伊勢丹などの現場から不安の声が漏れています。SNS上では「財布の紐が固くなった」というリアルな投稿が目立ち、生活者の防衛本能が如実に表れている印象です。単なる増税だけでなく、将来への不安も消費を抑制している一因かもしれません。
高額商品と衣料品の苦戦が招いた全社減収の背景
具体的な数字を振り返ると、大丸松坂屋百貨店が8.5%減と最も大きく落ち込み、三越伊勢丹が6.7%減、そごう・西武とエイチ・ツー・オーリテイリングがそれぞれ5.3%減、高島屋が4.2%減と続きます。特に、かつては売上の柱だった「重衣料(じゅういりょう)」の不振が深刻です。
重衣料とは、コートやスーツといった厚手で重量感のある衣服のことで、単価が高いため百貨店の収益を支える重要なカテゴリーです。しかし、2019年11月は暖かい日が続いたことで季節感が薄れ、購入意欲が削がれてしまいました。気候変動という予測不能な要素も、経営に大きな影を落としています。
その一方で、軽減税率が適用されている食品部門は健闘を見せています。軽減税率とは、特定の商品の消費税率を8%に据え置く制度のことで、日々の食卓を預かる層には一定の安心感を与えているようです。日常的な支出は守りつつも、贅沢品や高額なコートは二の次にするという、消費者のシビアな取捨選択が透けて見えます。
私個人の意見としては、百貨店はもはや「モノを売る場所」から「体験を買う場所」へと、より大胆にシフトすべき局面に来ていると感じます。増税による価格の壁を越えさせるには、単なる商品提供以上の付加価値が不可欠です。年末商戦に向けて、食のイベントや体験型の企画でどれだけワクワクを提供できるかが勝負の分かれ目でしょう。
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