関西の演劇シーンが大きな転換期を迎えています。多くの小劇場が閉鎖を余儀なくされる厳しい現状がある一方で、劇場のあり方を根本から見直し、新たな運営モデルを模索する力強い動きも目立ってきました。特に大阪と京都では、演劇の灯を絶やさないための果敢な挑戦が続いています。
ネット上でも「応援していた劇場がなくなるのは寂しいけれど、新しい形での再出発には期待したい」といった声や「演劇人が自ら劇場を守ろうとする姿勢に心を打たれる」というSNSでの反響が広がっており、ファンだけでなく地域全体からの注目が集まっているようです。
大阪・日本橋から発信するクリエーター育成の拠点
大阪の日本橋を拠点とする「インディペンデントシアター」は、これまで賃貸物件で運営してきましたが、安定した活動を続けるために自社所有の劇場へと舵を切りました。2019年には「1st」を移転新築し、2020年秋には「2nd」も同様に新しく生まれ変わる予定です。
こちらの劇場は、アニメ関連事業を手掛ける企業が「次世代の才能を育てる種まき」として運営しており、あえて劇場の特色を固定しない自由な校風が魅力です。昨今話題の、漫画やゲームを舞台化した「2.5次元ミュージカル」で活躍する演出家もここから輩出されました。
2.5次元ミュージカルとは、平面の作品(2次元)を立体的な舞台(3次元)として再現するジャンルを指します。プロデューサーの相内氏は、劇場単体での黒字化は極めて困難だと語りますが、それでも新築を選んだ背景には、文化を守るという並々ならぬ「志」が感じられます。
京都から世界へ!ビジネスモデルとしての「シアターE9京都」
一方、京都では2019年6月に「シアターE9京都」が産声を上げました。演出家のあごうさとし氏らが中心となり、クラウドファンディングなどで資金を募ったこの劇場は、従来の「貸し小屋」という枠組みを超えた、画期的な多角経営を目指している点が特徴的です。
劇場内にコワーキングスペース(異なる職種の人々が机を共有して働く場所)を設けたり、企業の協賛やコンサルティング業務を行ったりと、収益源を分散させています。これにより、若手劇団でも利用しやすい安価な貸館料を維持しながら、健全な運営を両立させようとしています。
2019年11月には近隣で無料の野外イベントを開催するなど、地域との繋がりも深めています。演劇に馴染みのなかった住民も劇場を訪れるようになっており、支配人の蔭山氏も確かな手応えを感じているようです。単なる施設ではなく、街の一部として溶け込む努力が実を結んでいます。
編集部が考える「演劇と社会の新しい距離感」
大阪城公園の「クールジャパンパーク大阪」など、大規模なホールの整備は進んでいますが、真に重要なのは「才能を育む土壌」としての小劇場の存在です。これまではオーナーの個人的な情熱に頼りすぎていた面がありましたが、これからは地域やビジネスと連携する視点が不可欠でしょう。
劇場の運営を演劇ファンだけの責任にするのではなく、社会全体で支える仕組み作りこそが、文化の成熟に繋がると私は考えます。演劇が持つ「物語の力」をビジネスや地域振興に還元していく今回の試みは、閉塞感のある現代において非常に希望に満ちたアクションではないでしょうか。
コメント