東京都において、2019年04月01日から画期的な取り組みがスタートしました。保護者による体罰を明確に禁じた「東京都こどもへの虐待の防止等に関する条例」の施行です。これまで「しつけ」という言葉の裏に隠れがちだった家庭内の暴力に対し、自治体が毅然とした態度でノーを突きつけた形になります。2018年03月に目黒区で発生した悲惨な虐待死事件は、社会全体に深い悲しみと怒りをもたらしました。この条例は、あのような悲劇を二度と繰り返さないという、都の不退転の決意が込められているのでしょう。
SNS上では「ようやく一歩前進した」「言葉の暴力も対象になるのは心強い」と期待の声が上がる一方で、「罰則がないのでどこまで浸透するか不安」という実効性を疑問視する意見も見受けられます。確かに、法律で縛るだけでは家庭内の問題は解決しませんが、社会全体の意識を変える大きなきっかけになるはずです。今回の条例では、肉体的な苦痛を与える体罰だけでなく、暴言や無視といった「精神的な苦痛」についても、子どもの尊厳を傷つける行為として厳しく禁止されています。
「しつけ」と「体罰」の境界線とは?条例が定める禁止事項
ここで改めて、条例が指す「体罰」や「不適切な関わり」について整理しておきましょう。東京都は、子どもに対して肉体的、あるいは精神的な苦痛を与える行為を「子供の品位を傷つける罰」と定義しました。これには叩く・蹴るといった暴力だけでなく、長時間立たせる、食事を与えない(ネグレクト)、あるいは人格を否定するような怒鳴り声を浴びせるといった行為も含まれます。これらは教育的な意図があったとしても、子どもの健やかな成長を妨げる虐待に他なりません。
さらに、今回の条例では妊婦や乳幼児の健康診断をしっかりと受診させることも努力義務として明記されました。健診は、育児の悩みを専門家に相談できる貴重な機会であり、虐待の兆候を早期に発見するための「セーフティーネット」としての役割も期待されています。周囲の助けを借りることは、決して恥ずかしいことではありません。孤立した育児を防ぐことこそが、子どもを、そして何より保護者自身を守るための第一歩となるはずです。
増え続ける相談件数と、これからの児童相談所の役割
2019年11月20日現在のデータによれば、2018年度に東京都の児童相談所が対応した虐待件数は1万6967件に達しました。これは、わずか10年間で5倍以上に膨れ上がった驚くべき数字です。事態の深刻化を受け、条例では児童相談所(児相)の権限強化も盛り込まれました。具体的には、所長の判断で迅速に立ち入り調査や一時保護を行えるようにし、躊躇のない介入を目指しています。スピード感を持った対応が、小さな命を救うための絶対条件となるでしょう。
2019年06月には国でも改正児童虐待防止法が成立し、2020年04月からの施行を控えています。今後、自治体と国、そして警察や医療機関がリアルタイムで情報を共有し合う体制づくりが加速する見通しです。個人的な意見を述べさせていただけるなら、行政の連携強化はもちろん不可欠ですが、私たち市民が「隣の家の子」に無関心でいないことも同様に重要です。社会全体で子どもを見守り、育てるという文化を醸成することこそが、虐待死という最悪の結末をゼロにするための特効薬になると信じています。
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