美しい自然や歴史的な遺産を持つ日本の離島が、いま大きな転換期を迎えています。広島県廿日市市では、日本三景の一つである「安芸の宮島」の環境を守るため、島を訪れるたびに課税する「入島税」の導入に向けた議論が2019年10月に再開されました。また、沖縄県の竹富島でも2019年9月から任意の入島料徴収が始まっており、観光資源の持続可能性を模索する動きが全国で加速しているのです。
こうした背景には、観光客が押し寄せすぎて地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」という深刻な問題があります。宮島では2018年の来島者が430万人を超え、10年前から100万人も増加しました。急増するゴミの処理や老朽化するターミナルの整備には、今後5年間で約15億円もの巨費が必要とされており、市は「法定外目的税」という形で1回100円程度の徴収を検討しています。
「法定外目的税」とは?先行する沖縄の事例と課題
ここで注目したいのが、地方自治体が独自の目的で新設できる「法定外目的税」という仕組みです。すでに沖縄県の渡嘉敷村や座間味村などでは「環境協力税」として導入されており、船舶運賃に上乗せする形で100円が徴収されています。これらは貴重なサンゴ礁や美しい海、いわゆる「美ら島」を守るための大切な財源として活用されており、観光客数への目立った悪影響も見られないのが現状です。
しかし、宮島特有の懸念点も存在します。沖縄の離島便は運賃が数千円単位ですが、宮島のフェリーは往復でわずか360円です。そこへ100円の税が加わると、通勤や通院で日常的に船を利用する島民にとっては、負担感が非常に大きくなってしまいます。行政側も「住民の深い理解を得ること」が最大の壁であると認識しており、公平性をどう担保するかが今後の議論の焦点となるでしょう。
一方、竹富島のように税ではなく「任意」の協力金形式をとる地域もあります。ここでは1人300円を募り、無秩序な開発から土地を買い戻す資金などに充てる計画です。SNS上では「美しい景観を守るためなら喜んで払いたい」という賛同の声がある一方で、「支払い場所が分かりにくい」といった戸惑いの声も上がっており、制度の周知や利便性の向上が成功のカギを握りそうです。
編集部アイ:観光客も「守る側」の一員になる時代へ
筆者は、この「入島税」という仕組みは単なる集金手段ではなく、訪れる人々がその土地の「守り手」になるための会費のようなものだと考えています。100円や300円という金額は、コーヒー一杯分にも満たない小さなものかもしれません。しかし、その積み重ねが数十年後の美しい景色を約束するのであれば、非常に価値のある投資と言えるのではないでしょうか。
大切なのは、集まったお金が具体的にどう使われ、どのように街を良くしたのかを、観光客と住民の双方に透明性を持って示すことです。専門家が指摘するように、税金の公平性を保ちつつ、島を愛するすべての人々が納得感を持てる制度設計を期待します。2019年12月1日現在、各地で進むこの試みが、日本の観光地が抱える課題を解決する一石となることを願ってやみません。
コメント