自動車を「所有」する時代から、必要な時だけ「共有」する時代へのシフトが加速しています。シェアリングエコノミーの浸透は、単なる利便性の向上に留まらず、自動車市場の構造そのものを根底から覆そうとしています。2019年12月01日現在の状況を鑑みると、この変化は私たちの想像を絶するスピードで進んでいることが分かります。
交通エコロジー・モビリティ財団の調査によれば、国内のカーシェア車両数は2019年には約3万5千台に達し、わずか5年で3倍弱という驚異的な伸びを記録しました。SNS上でも「維持費を考えるとシェアで十分」「都心ならマイカーは不要」といった声が目立ち、若年層を中心に「車離れ」というよりも「賢い選択としてのシェア」が定着しつつあります。
2030年には新車の過半数が「法人所有」へ
衝撃的な予測が発表されました。PwCコンサルティングの分析によると、2030年には世界で販売される新車の52%が法人所有の「商用車」となり、個人向けの乗用車を逆転する見通しです。これまではトラックやバスが主役だった法人車市場ですが、今後は配車サービスやカーシェア用の車両がその24%を占める巨大勢力へと成長していくでしょう。
この変化は、自動車に求められる価値観を「憧れ」から「効率」へと変貌させます。これからは車体のデザインやカラーバリエーションよりも、修理部品が即座に手に入るメンテナンス性や、購入から廃棄までの総費用である「ライフサイクルコスト」が最優先される時代になります。個人の趣味性よりも、ビジネスとしての稼働率が重視されるのです。
さらに、シェア車両は自家用車の5倍から10倍という長距離を走行するため、これまで以上の圧倒的な耐久性が求められます。車はもはやステータスシンボルではなく、過酷な使用に耐えうる「社会インフラ」としての側面を強めていくでしょう。筆者は、この流れが日本のものづくりの精度をさらに高める契機になると確信しています。
自動運転技術と巨大資本の融合
法人が車両を一括管理する形態は、次世代技術の導入を後押しします。米ウーバーテクノロジーズのような巨大な購買力を持つ企業が登場したことで、メーカー側も「シェア専用車」の開発に本腰を入れ始めました。例えば、ボルボ・カーはウーバー向けに自動運転システムを搭載した専用車両を公開し、一度に数万台規模の契約を結んでいます。
トヨタ自動車も負けてはいません。2021年の実用化を目指し、ソフトバンクグループやデンソーとタッグを組んで相乗り専用車の開発を急いでいます。現在は1台数千万円とも言われる高額な自動運転車両ですが、量産化によってコストを抑え、技術そのものを外販する戦略を描いています。このスピード感こそが、生き残りの鍵となるでしょう。
一方で、この変革は国の財政にも影響を及ぼします。新車販売台数の減少に伴い、従来の車両課税では税収が維持できなくなる恐れがあるのです。政府は2018年から、重さや排気量ではなく、実際に走った距離に応じて課税する「走行距離課税」の検討を開始しました。これは、道路の摩耗に応じた公平な負担を求める新しい考え方です。
米国オレゴン州では、2026年までにすべての新車にこの走行距離課税を適用する目標を掲げ、すでに実証実験が行われています。日本においても、シェアリング時代の到来に合わせた、納得感のある新しい税制の議論が不可欠です。車を取り巻く環境は、ハードウェアからソフトウェア、そして社会制度まで、今まさに革命の渦中にあります。
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