仮想通貨はマネロンの温床か?FATF対日審査の衝撃と迫られる「トラベルルール」への対応

暗号資産(仮想通貨)を取り巻く環境が、いま大きな転換点を迎えています。2019年11月中旬、国際的なマネーロンダリング対策の司令塔である「FATF(金融活動作業部会)」が、日本政府や金融機関に対する実地審査を行いました。この審査の最大の焦点は、匿名性が高く国境を越えた送金が容易な仮想通貨への規制です。SNSでは「日本の取引所は大丈夫なのか」「資産が凍結されたら困る」といった不安の声が目立っています。

マネーロンダリングとは、犯罪で得た「汚れたお金」を架空口座や複雑な取引を通じて、出所を隠す「資金洗浄」のことです。FATFは、テロ資金供与などを防ぐために世界規模で監視を行っています。日本は2008年の前回審査において、顧客管理の甘さから「不履行」という厳しい評価を受けました。もし今回も低評価となれば、日本の金融機関が国際取引を制限される「高リスク国」に指定される恐れがあり、業界全体に緊張が走っています。

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厳格化する登録審査と業界の苦悩

金融庁による仮想通貨交換業者の登録ハードルは、かつてないほど高まっています。2019年3月に登録を完了したディーカレットの時田一広社長は、ネット銀行に頭を下げてまで犯罪対策のノウハウを学んだと明かしました。流出事件の再発を防ぐため、当局は極めて慎重な姿勢を崩していません。新興企業にとっては、これまでの自由な気風とは異なる、既存の銀行並みの厳格なコンプライアンス(法令順守)が求められる試練の時と言えるでしょう。

専門家によれば、今回の審査は単なるルール整備だけでは不十分で、各社が自らリスクを分析し対処する「実効性」が問われています。しかし、足並みをそろえすぎれば「形式的」だと批判され、独自に動けば「基準不足」を指摘される恐れもあります。2019年12月01日現在、日本の業者は「何が疑わしい取引なのか」という定義さえも、手探りで模索しなければならない過酷な状況に立たされているのが実情です。

大手金融グループの知見と「トラベルルール」の壁

こうした中、SBIホールディングスのような既存金融の知見を持つ企業がリードを広げています。傘下のSBI VCトレードでは、銀行や証券での管理ノウハウを共有し、2019年2月からは「指定されたアドレス以外への出庫を制限する」という極めて厳格な本人確認を導入しました。これは経済制裁対象国への不正な送金を防ぐための措置です。こうした徹底した管理体制こそが、これからの業界のスタンダードになるべきだと私は考えます。

今後の最大の課題は、FATFが提唱する「トラベルルール」への対応です。これは仮想通貨を送る際、送り手の情報を送り先にも提供する義務のことです。既存の銀行間では当たり前に行われていますが、匿名性を特徴としてきた仮想通貨の世界では、技術的にもプライバシー保護の観点からも高い壁が存在します。2020年夏に公表される審査結果次第では、日本の仮想通貨業界はさらなる荒波に揉まれることになるでしょう。

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