混乱のさなかにある香港で、意外な底力が示されています。2019年11月中旬、アジア最大級の美容見本市「コスモプロフ・アジア」が開催されました。街中では激しい抗議活動が続いていますが、会場を訪れたインドネシアのビジネスマンは、自身の国での経験を引き合いに出し、冷静に商談に臨んでいます。デモの現場を避ければ実務に支障はないという、プロフェッショナルな姿勢が印象的ですね。
SNS上では、現地の交通インフラの乱れを心配する声が多く聞かれます。「展示会は大丈夫なのか」といった不安の声が目立つ一方で、実際に現地入りした出展者からは「会場内は別世界のように熱気がある」という報告も上がっています。旅行客が前年比で約3割減少するという厳しい局面において、ビジネス目的の訪問客がこれほどまでに粘り強く足を運んでいる事実は、注目に値するでしょう。
過去の危機を乗り越えた「香港ブランド」の自負
香港コンベンション・エキシビションセンター(HKCEC)の幹部は、今回の事態を「新たな試練」と位置づけています。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行や、世界を揺るがした金融危機を克服してきた彼らにとって、逆境は決して珍しいものではありません。SARSとは、かつてアジアを中心に猛威を振るった重い肺炎を引き起こす感染症ですが、こうした公衆衛生上の危機さえも、彼らは団結して乗り越えてきたのです。
驚くべきことに、イベントが集中する10月から11月にかけて、予約のキャンセルは映画関連などわずか3件に留まりました。2020年末までの予約枠もほぼ埋まっているという状況からは、主催者側の強い信頼が見て取れます。香港貿易発展局が主催する秋の主要展示会では、海外からの出展者数が前年を上回る約7300社に達しました。逆風の中でも「香港で商売をする価値」は色褪せていないようです。
周辺都市の猛追と香港が優位に立つ決定的な要因
もちろん、近隣都市も黙って指をくわえているわけではありません。中国本土の深セン市では、巨大な「深セン国際会展中心」が新たに誕生しました。しかし、本土特有の規制、つまり人やモノ、資金の移動に対する「壁」が国際的なビジネスの妨げになっているとの指摘もあります。自由な経済活動が保障されている香港のシステムは、一朝一夕には代替できない圧倒的なアドバンテージと言えるでしょう。
カジノの街として知られるマカオも、平日の稼働率を上げるために国際会議の誘致を加速させています。ですが、企業の展示会を開くには「ギャンブルの街」というイメージが強すぎるという懸念も根強いようです。派手な娯楽施設よりも、ビジネスに特化した成熟した環境を求める層が、あえてマカオから香港へ開催地を戻すケースも出ています。やはり、ビジネス拠点としての歴史の深さが、現在の香港を支えているのでしょう。
編集者の視点から言えば、現在の香港が抱える最大のリスクは、施設の不足ではなく「イメージの悪化」にあります。抗議活動がさらに激化し、国際的な信頼を損なう事態になれば、長年築き上げた地位が揺らぎかねません。しかし、自由な交易を武器に困難を突破してきた香港のビジネスマンたちの強靭さには、敬意を表さざるを得ません。この街が再び静寂と活気を取り戻すことを願って止みません。
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