「海がないから、新鮮な魚は諦めるしかない」という長野県の常識が、今まさに塗り替えられようとしています。綿半ホールディングス傘下の綿半ホームエイドが、主力業態であるスーパーセンターの売り場に「いけす」を導入するという、大胆かつ画期的な戦略を打ち出しました。ホームセンターと食品スーパーが融合した便利な店舗に、まるで市場のような活気が加わります。
2019年11月中旬、安曇野市の「綿半スーパーセンター豊科店」が、このプロジェクトの第1号店としてリニューアルを果たしました。2020年3月までには、レイアウトの都合が付く長野県内を中心とした約14店舗へ順次展開される予定です。単にパック詰めの商品を並べるのではなく、生きた魚をその場で提供するという、究極の鮮度への挑戦が始まっています。
子どもたちの視線も釘付け!独自開発の「いけす」がもたらす集客力
注目すべきは、このために特別に開発されたという専用のいけすです。縦横1.5メートル、高さ1メートル強というサイズ感で、水深をあえて約40センチメートルと浅く設計しているのがポイントでしょう。これにより、上から覗き込むだけでカニやヒラメ、貝類などが元気に動く姿を間近に観察できます。
小さなお子様でも無理なく中を見られるこの工夫は、家族連れにとって強力な来店動機になるはずです。SNS上でも「スーパーの中に水族館ができたみたいで子どもが大喜び」「夕食の買い物ついでに生きている魚を見せられるのは教育にも良い」といったポジティブな反応が広がっています。注文を受けてからスタッフが網で魚をすくい上げるパフォーマンスは、買い物という日常を特別な体験へと変えてくれます。
ここで言う「スーパーセンター」とは、衣食住に関わるあらゆる商品を1つのフロアで会計できる、超大型の店舗形態を指します。広大な売り場を持つこの業態だからこそ、こうしたダイナミックな設備投資が可能になったと言えるでしょう。
名古屋・新潟から直送!常識を打ち破る「目利き」のネットワーク
綿半のこだわりは設備だけではありません。仕入れのルートにも独自のメスを入れています。2019年10月下旬からは、自社のバイヤーが名古屋の卸売市場へ直接出向き、厳しい目で見極めた魚介類を自社トラックで店舗まで運ぶという直送体制を構築しました。
「これまでは見慣れた魚ばかりで、鮮度もそこそこだった」という自社評価を、自ら打破しようとする姿勢には編集者としても感銘を受けます。名古屋の市場は魚種が豊富で、鮮度の基準も非常に高いことで知られています。まずは伊那店など南部3店舗からスタートしていますが、利用客からは「長野でこれほど質の高い魚が手に入るとは思わなかった」と、驚きの声が上がっているようです。
さらに新潟の漁業者とも連携し、生きたまま運ぶことを前提とした漁を依頼するなど、妥協のないサプライチェーンを築いています。こうした努力は、単なる商品拡充を超えた、リアル店舗としてのプライドを感じさせます。
対面販売が変える食卓と、最高益を見据えた綿半の未来
最近のトレンドとして、効率重視のパック販売から、あえて手間をかける「対面販売」への回帰が見られます。綿半でも、三枚おろしなどの加工をその場で引き受ける接客に力を入れています。プロと会話をしながら献立を決める楽しさは、ネット通販では決して味わえない実店舗ならではの付加価値ではないでしょうか。
2020年3月期の連結売上高は1142億円と、過去最高を更新する見通しです。M&Aによって急速に規模を拡大してきた同社ですが、今後はデジタルの強化と同時に、生鮮食品の質を極めることで「お店に行く理由」を明確にする戦略です。海のない信州の食卓に、波の音が聞こえてくるような鮮度を届ける。この熱意が長野県の流通を大きく変えていくに違いありません。
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