今、東京都の多摩地域において、特定のエリアに密着した「コミュニティーFM」が熱い視線を浴びているのをご存知でしょうか。2019年11月には狛江市で新局が誕生するなど、ここ2年ほどで4つもの放送局が産声を上げています。かつてはインターネットの台頭により影が薄くなったと言われたラジオですが、令和の時代を迎えた今、その価値が劇的な再評価を受けているのです。
2019年11月11日、午前11時11分11秒という「1」が並ぶ劇的な瞬間に、狛江ラジオ放送、通称「コマラジ」が放送を開始しました。大手放送局での経験を持つスペシャリストたちが協力し、番組のほとんどを独自に制作するというこだわりぶりです。SNS上でも「開局おめでとう!」「地元の声が聞こえるのが嬉しい」といった祝福の声が溢れ、地域コミュニティの新たな拠点として大きな期待が寄せられています。
災害時に真価を発揮する「究極のローカルメディア」
なぜ、これほどまでにコミュニティーFMが必要とされているのでしょうか。その背景には、未曾有の被害をもたらした東日本大震災での教訓があります。コミュニティーFMとは、一般的なラジオ局よりも出力を抑え、市町村単位などの狭い範囲に特化して情報を届ける放送局のことです。震災時、東北の各局が避難所の詳細や炊き出し情報など、生活に直結する細やかな情報を発信し続けたことが再注目のきっかけとなりました。
2019年に日本を襲った台風19号の際にも、多摩の放送局は驚異的な粘り強さを見せました。東久留米市の「FMひがしくるめ」や府中市の「ラジオフチューズ」は、通常番組を急きょ変更し、避難勧告や設営状況をリアルタイムで伝え続けたのです。行政が流す防災行政無線は、雨音や風の強さで聞き取りにくいことが多々ありますが、ラジオは室内でも確実に情報をキャッチできる頼もしい存在だと言えるでしょう。
私自身の考えとしましては、情報のデジタル化が進む現代だからこそ、こうした「顔の見える距離」の声が持つ安心感は計り知れないと感じます。ネット上の不確かな情報に翻弄されがちな災害時において、地元の地名が具体的に飛び交うラジオ放送は、住民にとって精神的な支柱にもなり得るはずです。自治体との災害協定が相次いで結ばれている現状は、まさに地域防衛の要として認められた証拠ではないでしょうか。
地元商店と歩む新しいビジネスモデルの形
放送を継続するためには、経済的な自立も欠かせません。そこで各局は、地元の商店が気軽に宣伝できるユニークな仕組みを導入しています。例えば、ラジオフチューズでは月額1650円という低価格から番組枠を提供しており、個人商店でも無理なくPRができるよう工夫されています。広告主を「スポンサー」としてだけでなく、地域を共に盛り上げる「パートナー」として捉える姿勢が、多くの共感を集めているようです。
さらに、FMひがしくるめでは加盟店制度を導入し、リスナー向けの無料カード会員も募集しています。会員数は約3000人に達しており、ラジオを聴いた人が実際に店へ足を運ぶという循環が生まれています。地域住民がメディアを支え、メディアが地元経済を潤すというこの幸福な関係性は、画一的な大規模メディアには真似のできない、コミュニティーFMならではの醍醐味だと言えるでしょう。
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