坂東玉三郎の神髄と若手の躍進!歌舞伎座12月公演「阿古屋」「白雪姫」の衝撃と見どころを徹底解説

2019年12月、冬の寒さを吹き飛ばすような熱気に包まれている東京・歌舞伎座。昨年に引き続き、師走の舞台を彩るのは人間国宝・坂東玉三郎氏が率いる精鋭揃いの一座です。今回の目玉は何といっても、琴・三味線・胡弓の三楽器を一人で弾きこなす超大作「阿古屋」でしょう。玉三郎氏に加え、次代を担う梅枝氏と児太郎氏がトリプルキャストで挑むという豪華な構成に、SNS上でも「これを見なければ年は越せない」と大きな期待が寄せられています。

玉三郎氏が阿古屋を勤めるAプロでは、かつての張り詰めた緊張感を超え、まるで呼吸をするかのような「自然体」の境地に達しているのが印象的です。長年の研鑽が結実したその佇まいは、まさに円熟の極みと言えるでしょう。一方、若手二人の挑戦も実に見応えがあります。梅枝氏は持ち前の古風でたおやかな魅力を放っていますが、今まさに芸の上り坂にいる彼だからこそ、さらなる力強さや情熱を期待したくなるのは、贅沢な悩みかもしれません。

対して児太郎氏は、自身の持つ気の強さが阿古屋という女性の意地に重なり、鮮やかな印象を残しています。ここで言う「意気地」とは、困難に直面しても折れない誇り高い精神を指しますが、彼のエネルギッシュな演技は観客の心を強く揺さぶるでしょう。また、共演陣も光ります。岩永役の松緑氏は兄貴分らしい安定感を見せ、重忠役の彦三郎氏は、その磨き抜かれたセリフ回しで劇場の空気を一変させる素晴らしさです。

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グリム童話と歌舞伎の融合!新作「白雪姫」の幻想的な世界

今月のもう一つの大きな話題は、グリム童話から着想を得た新作歌舞伎「本朝白雪姫譚話(ほんちょうしらゆきひめものがたり)」です。玉三郎氏演じる白雪姫の美しさはもちろんですが、梅枝氏が演じる「鏡の精」もまた、適役というほかありません。児太郎氏による魔女の熱演も目を引きますが、あまりの迫力に「玉三郎氏自身の魔女も見てみたかった」という声が上がるほど。新作ならではの試行錯誤が、舞台上に心地よい刺激を与えています。

一方、大仏次郎の名作「たぬき」に挑むのは市川中車氏です。中車氏は歌舞伎の世界に身を投じて7年という節目を迎え、非常に難しい時期に差しかかっています。今回の舞台では全身全霊の熱演を見せていますが、その熱量があまりに高く、作品が持つ本来の「エスプリ(気の利いた知的な情緒)」を上書きしてしまっている感は否めません。伝統芸能の型と個人の情熱をどう調和させるか、彼の真価が問われるステージと言えるでしょう。

夜の部の幕開けを飾る「矢口渡」では、梅枝氏演じる「お舟」の古典美が際立っています。江戸時代から続く伝統的な様式美と、彼の持つ古風な雰囲気が見事に合致し、物語に深い説得力を与えていました。松緑氏や萬太郎氏ら脇を固める役者陣も礼儀正しい芸を見せており、一座としてのまとまりを感じさせます。2019年12月26日までの千秋楽に向け、この若手たちの成長が歌舞伎の未来を明るく照らしているのは間違いありません。

私個人の見解としては、玉三郎氏が若手に大役を譲りつつ、自らは「自然体」で脇を支える現在の形は、技術の継承において理想的な姿だと感じます。確かに「もっと古典を見たい」というファンの声も理解できますが、新作への挑戦があるからこそ、伝統の良さが再認識されるのではないでしょうか。懐具合が気になる年末ではありますが、この一期一会の競演は、間違いなくチケット代以上の価値がある至高の体験です。

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