日本が世界に誇る医療機器メーカー、オリンパスがいま、劇的な財務体質の強化へと舵を切っています。同社は2019年12月14日、2023年3月期に向けた意欲的な財務目標を掲げ、フリーキャッシュフロー(純現金収支)の黒字額を約1000億円まで引き上げる方針を明らかにしました。これは今期の見通しと比較して約6割もの増加を目指す計算であり、市場からはその力強い成長シナリオに大きな期待が寄せられています。
ここで注目すべき「フリーキャッシュフロー(FCF)」とは、企業が事業を通じて稼ぎ出したお金から、将来のための投資を差し引いて最終的に手元に残る「自由な現金」のことです。この数値はいわば企業の「真の稼ぐ力」を証明するバロメーターといえるでしょう。過去には不正会計問題に端を発した和解金の支払いなどが重なり、2019年3月期のFCFは66億円にとどまりましたが、いよいよ本格的な反撃体制が整ったようです。
内視鏡の8年ぶり新製品と「使い捨て」市場への挑戦
快進撃の原動力となるのは、同社の圧倒的な強みである内視鏡事業に他なりません。特に中国をはじめとする新興国での販売が絶好調であることに加え、2021年3月期には待望の新製品投入を計画しています。約8年ぶりとなる大規模な刷新が行われれば、先進国における買い替え需要が一気に加速するのは間違いないでしょう。規制当局の承認を前提としつつ、来期前半の発売を目指すスピード感には、同社の並々ならぬ執念が感じられます。
さらに、医療現場で急速にニーズが高まっている「使い捨て内視鏡」分野への参入も2022年3月期を目途に進めています。従来の洗浄して再利用するタイプと比較して、細菌感染のリスクを劇的に低減できる点が大きなメリットです。SNS上では「洗浄の手間が省けるだけでなく、衛生面での安心感が違う」と、医療従事者と思われるアカウントからの好意的な反応も目立っており、この新機軸の戦略が収益の柱として成長することが期待されます。
攻めのM&Aと株主還元で描く未来予想図
潤沢に創出された現金は、さらなる成長のための投資や、株主への還元に充てられる予定です。M&A(企業の合併・買収)においては、得意の検査分野にとどまらず、治療分野まで裾野を広げるための戦略的な買収を検討しているとのことです。また、2021年3月期には総還元性向30%を目標に掲げており、投資家に対しても利益をしっかりと分配する姿勢を鮮明に打ち出しています。攻守のバランスが取れた経営判断といえるでしょう。
筆者の視点ではありますが、今回の発表は単なる数値目標の提示以上の意味を持っていると感じます。これまでの苦境を乗り越え、技術力という原点回帰によって再び世界をリードしようとする力強い意思表明ではないでしょうか。コスト削減の徹底と高付加価値な製品展開を両立させることで、オリンパスがかつてないほどの輝きを取り戻す日は、そう遠くない将来にやってくると確信しています。
コメント