化学業界に激震が走るニュースが飛び込んできました。東洋インキSCホールディングスは2019年12月13日、今期の連結純利益が前回予想を大幅に下回り、前期比28%減の85億円に沈む見通しを明らかにしました。当初はわずかながら増益を確保すると見られていただけに、この急転直下の下方修正は市場に大きな驚きを与えています。
この苦境の背景にあるのは、巨大市場である中国での大苦戦です。スマートフォンやテレビの売れ行きが鈍化している影響で、液晶パネルに欠かせない高機能な塗料の需要が目に見えて冷え込んでいます。SNS上でも「テック業界の停滞がインクメーカーを直撃している」といった、景気の先行きを不安視する声が目立っている状況です。
液晶パネル向け塗料の需要減退と価格競争の激化
2019年12月期の売上高についても、当初の増収予想から一転して、前期比4%減の2800億円へと引き下げられました。特に中国や台湾の顧客からは、厳しい値下げ要求が突きつけられており、利益を削り取る要因となっています。高機能顔料などは同社の強みですが、供給過剰や市場競争の激化によって、その付加価値を維持することが極めて困難な局面を迎えているようです。
そもそも「顔料」とは、製品に色を付けるための粉末状の物質を指します。インキや塗料の主原料となりますが、液晶ディスプレイなどの精密機器に使われるものは、単なる着色以上の高度な機能が求められます。こうした専門性の高い分野での失速は、同社の収益構造に根深い影を落としています。2019年1月〜9月期の累計決算でも、純利益は前年同期比36%減と深刻な数字を叩き出しました。
フィリピン子会社で発覚した不適切会計の余波
さらに、業績悪化に追い打ちをかけたのがフィリピン子会社における不祥事です。現地社員が赤字を隠蔽するために原材料費を少なく見積もり、不足した資金を簿外で借り入れるという不適切な会計処理を行っていました。これを受け、会社側は2017年3月期まで遡って決算を修正することを決断しました。累計で26億円もの純利益が失われる結果となり、信頼回復への道のりは険しいものになりそうです。
私は、今回の事態は単なる一時的な景気後退ではなく、グローバル経営の難しさを象徴していると感じます。中国市場への依存度が高いビジネスモデルは、地政学リスクや市場変化の煽りを受けやすいという弱点を露呈しました。また、海外拠点のガバナンス(企業統治)の不備は、積み上げてきたブランドイメージを一瞬で毀損してしまいます。今後は、徹底した管理体制の再構築が急務となるでしょう。
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