鉄鋼業界を支える影の主役ともいえる「黒鉛電極」の市場に、今、大きな激震が走っています。炭素製品の国内大手である東海カーボンは、2019年11月6日、今期の業績予想を下方修正するという苦渋の決断を下しました。2019年12月期における連結最終利益は、当初の予想を大きく下回り、前期と比べて51%も少ない361億円にまで落ち込む見通しです。
当初は33%程度の減益に留まると予測されていましたが、市場の冷え込みは想定以上に厳しく、下方修正は今期で2度目となります。一方、同業の昭和電工が同日に公表した2019年1月から9月期の連結決算についても、純利益が前年同期より約18%減少しました。両社の決算は、世界的な景気後退の波がひたひたと押し寄せている現状を浮き彫りにしたといえるでしょう。
黒鉛電極と電気炉の関係性とは?
ここで少し、専門的な用語について触れておきましょう。今回の業績悪化の主因となった「黒鉛電極」とは、電気炉を用いて鉄スクラップを溶かし、新しい鋼材を生産する際に欠かせない部材のことです。耐熱性に優れ、強い電気を通す性質を持つこの電極は、まさに電気炉製鋼の「命」とも呼べる存在でしょう。しかし現在、世界的な景気減速の影響を受け、この電気炉の稼働率が世界各地で低下しています。
鉄鋼製品の需要が停滞すれば、当然ながら電極の出番も少なくなります。現在、市場では供給過多による「在庫調整」が長期化しており、これがメーカーの収益を直接的に圧迫しているのです。SNS上でも投資家や業界関係者から「一時期の好況が嘘のようだ」「電極バブルの終焉か」といった、先行きを不安視する声が数多く投稿されており、市場の警戒感は最高潮に達しています。
筆者の個人的な見解としては、今回の減益は単なる一時的な落ち込みではなく、構造的な需給バランスの変化を示唆しているのではないかと感じています。かつての高収益体質に甘んじることなく、需要の波に左右されない多角的な経営戦略が、今こそ両社には求められているはずです。景気の循環は避けられませんが、この苦境を次なる飛躍への「準備期間」に変えられるかどうかが、今後の再成長の鍵を握るでしょう。
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