電線業界の重鎮として知られるフジクラが、経営の舵を大きく切り直そうとしています。同社は2021年3月期において、企業の真の稼ぐ力を示す「フリーキャッシュフロー(純現金収支)」を黒字へと転換させる方針を打ち出しました。フリーキャッシュフローとは、営業活動で得たお金から設備投資などの支出を差し引いた、会社が自由に使える手元の資金を指します。2019年12月12日現在の見通しでは、今期まで4年連続の赤字が続く見込みとなっており、まさに背水の陣で挑む再建計画といえるでしょう。
これまでのフジクラは、スマートフォン向けの部材や光ファイバーといった成長分野に対して、極めて攻撃的な姿勢で生産能力の増強を図ってきました。特に次世代通信規格「5G」の到来や、中国市場における大規模なインフラ整備を商機と捉え、巨額の資金を投じてきたのです。実際に2019年3月期までの3年間で投じられた設備投資額は1439億円にのぼり、その前の3年間と比較して約8割も増加しました。しかし、期待に反して事業環境が急激に冷え込み、投資に見合うだけの利益を回収できていないのが現状です。
苦境を打破する投資の減速と財務健全化への道
足元の業績を見渡すと、世界的な景気減速の波が同社の主力事業を直撃していることが分かります。2019年4月から2019年9月期の中間決算では、光ファイバー関連事業の利益が前年同期比で4割も減少したほか、スマホ向け部材を扱う部門にいたっては赤字へ転落してしまいました。この収益性の低下は、SNS上でも「大手電線メーカーといえど楽観できない」「5G特需の陰りを感じる」といった懸念の声として広がっており、投資家の視線も一段と厳しさを増しています。
業績の悪化に伴い、会社のサイフ事情である財務体質も予断を許さない状況にあります。2019年9月末時点での有利子負債、つまり利息を付けて返さなければならない借金は2736億円に達し、前期末から8%増えて過去最高水準を記録しました。こうした事態を重く見た経営陣は、今期の設備投資を前期比3割減の370億円に抑えるなど、アクセルを緩めてブレーキを踏む決断を下しました。過度な膨張を抑え、まずは健全なキャッシュの流れを取り戻すことが最優先課題となっています。
個人的な見解としては、今回の決定は「遅すぎた決断」ではなく、将来の飛躍に向けた「賢明な屈伸」であると評価したいところです。5GやDXの波は確実に存在しますが、過剰な設備投資は平時において牙を剥くリスクを孕んでいます。今のフジクラに必要なのは、闇雲な規模拡大ではなく、高付加価値な製品で着実に利益を残す筋肉質な体質改善ではないでしょうか。2021年3月期の黒字化達成が、同社の信頼を再び盤石なものにするための重要な試金石となることは間違いありません。
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