2019年12月15日、中国・広州で開催されたバドミントン・ワールドツアーファイナルの女子シングルス準決勝。日本のエース、山口茜選手は中国の強敵・陳雨菲選手と激突しましたが、惜しくも決勝進出を逃す結果となりました。第2ゲームの中盤、相手の放った運の味方するヘアピンショットがネットをかすめて自陣に落ちた瞬間、それまで張り詰めていた山口選手の集中力が途切れてしまったかのように見受けられました。
そこからの展開は、本人も「意識が追いつかなかった」と語るほど、苦しい時間が続きます。得意のスマッシュはラインを割り、ネット際の繊細な技術であるヘアピンも甘く浮いてしまうなど、精彩を欠いたまま7連続失点を喫してしまいました。こうした状況に対し、SNS上では「茜ちゃんならここから巻き返せるはず!」「足が少し重そうに見えるのが心配」といった、ファンの切実な声と熱いエールが数多く飛び交っています。
かつての世界ランキング1位を支えた驚異的なフットワークも、この日は本来のキレを欠いている印象でした。第1ゲームの場面では、相手の鋭い奥へのショットに対し、足がもつれてシャトルをラケットに引っ掛けてしまう一幕もありました。これは、今シーズン後半に彼女を苦しめた腰やふくらはぎの怪我の影響が、まだ完全に拭い去れていないことを物語っているのでしょう。スピードへの対応力は、いまだ完全復活の途上にあると言えます。
苦悩のシーズンを越えて見えた「バドミントンの楽しさ」
一時期は「バドミントンが楽しくない」とまで口にしていた山口選手ですが、今大会の戦いを通じて、ようやく本来の明るい表情が戻ってきたことは大きな収穫です。トッププレイヤーたちと高いレベルで競り合えた経験は、彼女にとって何物にも代えがたい自信となったはずでしょう。試合後には「大切にしている気持ちを保って試合ができたことはプラス」と、前向きな言葉も聞かれ、精神的なリバイバルを感じさせてくれました。
編集者としての視点から述べさせていただくと、山口選手の最大の魅力は、小柄な体格を補って余りある粘り強さと、型にハマらない自由なプレースタイルにあります。今回の敗戦で露呈した「踏ん張りきれない弱さ」は、言い換えればさらなる伸び代に他なりません。2020年の夏に控える大舞台を目前に、挫折を経験し、それを乗り越えようとする今の姿こそ、彼女をより強く、そして賢い選手へと進化させる糧になるはずです。
2019年12月15日のこの敗戦は、決して終わりではなく、輝かしい未来へのプロローグに過ぎないでしょう。2度目の五輪出場がほぼ確実視される中、苦しい1年を戦い抜いた経験は、来たるべき本番で必ず大きな武器となります。再びコート上で縦横無尽に跳ね回り、心から競技を楽しむ山口茜選手の姿が見られる日を、私たちは信じて疑いません。世界を驚かせる「茜色の旋風」が吹き荒れる日は、もうすぐそこまで来ています。
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