幕末の悲劇を照らす「白百合」の輝き!須賀しのぶ氏が描く薩摩と会津の禁断の恋

歴史の荒波に翻弄される人々の心を鮮烈に描き出す作家、須賀しのぶ氏。ベルリンの壁崩壊前夜を舞台にした名作『革命前夜』などで知られる彼女が、2019年12月7日、ついに自身のルーツとも言える「幕末」をテーマにした新作を世に送り出しました。

最新作『荒城に白百合ありて』は、これまでヨーロッパの激動を追ってきた著者が、満を持して日本の夜明けを描いた挑戦作です。舞台となるのは、維新の動乱が極まる1868年の会津。敵対する薩摩と会津という、決して相容れない立場にある男女の運命的な恋が綴られます。

SNS上では「歴史の重厚さと恋愛の切なさが絶妙なバランス」「会津出身の著者だからこそ書ける、魂を揺さぶる物語」といった絶賛の声が相次いでいます。両親が会津出身である須賀氏にとって、この地を舞台にすることは、特別な覚悟が必要だったのでしょう。

これまでは、故郷への思い入れが強すぎるあまり「会津側に偏った描写になるのではないか」という懸念から、執筆を辞退してきたといいます。しかし、他国の悲劇を描き切った経験が、自国の歴史を客観的に見つめる強さを彼女に与えたのです。

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崩壊する価値観の中で見つけた「個」としての愛

物語の幕開けとなる1868年は、戊辰戦争(ぼしんせんそう)という日本最大の内戦が勃発した年です。新政府軍の薩長勢力が会津藩に迫る中、自決を覚悟した鏡子のもとに届いた一通の文。それが、かつて安政の大地震で出会った薩摩藩士、岡元伊織との記憶を呼び覚まします。

鏡子は、家や家族を守る「役割」に忠実な、当時の模範的な武家の女性として描かれています。しかし、幕末という「昨日までの正義が今日から悪になる」ような価値観の崩壊が、彼女を一人の女性としての自我へと目覚めさせていくのです。

一方、相手役の伊織は、時代の熱狂から一歩引いた虚無感を抱えた人物です。目的のためなら手段を選ばない者が目立ったこの時代に、流れに乗れない彼の不器用さは、現代に生きる私たちの心にも深く共鳴するのではないでしょうか。

私は、この作品が単なる「ロミオとジュリエット」的な悲恋物語に留まらない点に注目しています。須賀氏がかつて少女小説で培ったキャラクター描写の妙が、幕末という極限状態において、個人の感情をより鮮明に浮き彫りにしているからです。

歴史とは常に多面的であり、勝者の側からの視点だけでは語れません。須賀氏が「フラットな歴史観」を追求し続ける姿勢は、分断が進む現代社会において、他者を理解するための大切なヒントを提示してくれているように感じます。

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