2019年12月18日、世界中の旅のあり方が大きな転換点を迎えています。欧州を中心とした先進国で、飛行機の利用をあえて控える動きが加速しているのです。これは単なる一時的な流行ではなく、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出に対する、消費者の真剣な危惧の表れと言えるでしょう。
このムーブメントの象徴となっているのが、スウェーデンの若き環境活動家、グレタ・トゥンベリ氏です。彼女は「気候変動の危機は今そこにある」というメッセージを全身で示すため、移動に飛行機を使いません。2019年9月の国連気候行動サミットや、同年12月のCOP25への参加に際しても、ヨットや鉄道を駆使して移動しました。
彼女のこうした徹底した姿勢は、SNS上でも「自分に何ができるか考えさせられる」といった共感の嵐を呼んでいます。グレタ氏が米誌タイムの2019年「今年の人」に選出されたことも、この問題がいかに世界的な関心事であるかを物語っていますね。個人の行動が社会を動かす、新しい時代の幕開けを感じずにはいられません。
彼女の母国スウェーデンには「フライトシェイム(飛び恥)」という言葉が誕生しました。これは飛行機に乗ることを恥じるという意味の造語です。実際にスウェーデンの国営空港のデータによると、2019年1月から9月の国内線利用者数は、前年の同じ時期と比べて約8%も減少しており、社会心理の変化が数字にも顕著に現れています。
航空業界を襲う「脱・飛行機」のインパクト
国際航空運送協会(IATA)の報告によれば、2018年の航空業界による二酸化炭素排出量は約9億トンに達し、世界全体の約2%を占めています。さらに深刻なのはその増加スピードで、民間機の排出量は過去5年で32%も急増しました。これは専門機関の予測を遥かに上回るペースであり、対策は一刻の猶予も許されません。
ここで専門用語を解説しますと、排出量取引制度とは、企業ごとに排出できるガスの枠を決め、余った枠や足りない枠を売買する仕組みのことです。2019年には米カリフォルニア州がこの対象を航空燃料にも拡大しました。また、植物などの生物資源を原料とする「バイオ燃料」の開発も、石油由来の燃料に代わる救世主として期待されています。
航空各社もこの逆風に対し、驚くべき柔軟性を見せ始めました。例えばKLMオランダ航空は、2020年3月から特定の短距離路線を廃止し、代わりに鉄道チケットを提供するという大胆な策に打って出ます。「空の旅」を提供する企業が、自ら「陸の旅」を勧める姿には、強い危機感と誠実さが同居しているように感じます。
また、フランスやドイツでも2020年から航空券への課税を強化し、その財源を鉄道網の整備に充てる方針を固めています。イギリスの調査では、1キロメートルあたりの二酸化炭素排出量は、国内鉄道が41グラムであるのに対し、国内便は133グラムと3倍以上の差があります。これでは消費者が鉄道を選ぶのも無理はありません。
私は、この「飛び恥」という概念は、単なる航空業界へのバッシングではなく、私たちのライフスタイル全体への問いかけだと考えています。便利さの裏側にあるコストに、人類がようやく目を向け始めたのです。もちろん移動の自由は大切ですが、2019年の今、私たちは「賢い選択」という新しいラグジュアリーを手にしつつあるのではないでしょうか。
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