中国「科創板」の苦悩と香港の焦燥:アジア金融拠点を巡る野望の行方

アジアを代表する国際金融都市・香港が揺れ動いています。中国政府は今、香港の独占的な地位に対抗しようと、本土やマカオでの市場整備を急ピッチで進めています。その象徴とも言えるのが、2019年に上海に誕生した新市場「科創板(かそうばん)」です。

科創板とは、習近平国家主席の肝いりで設立された「中国版ナスダック」とも呼ばれるハイテク企業向けの証券市場です。従来の市場よりも上場基準を柔軟にし、成長性の高いIT企業を呼び込む狙いがありましたが、足元の状況は決して順風満帆とは言えません。

SNS上では「鳴り物入りで始まった割に、盛り上がりに欠ける」といった冷ややかな意見も散見されます。実際、上海証券取引所は2019年10月11日、予定していた指数の算出を見送ると発表しました。投資に値する銘柄が不足しているとの指摘を、暗に認めた形です。

華々しいスタートを切ったはずの市場が、なぜ苦戦しているのでしょうか。2019年7月22日に第1陣として25銘柄が上場した際は、株価が公募価格の2.4倍に跳ね上がる活況を呈しました。しかし、2019年12月13日時点では、初日の終値から14%も下落しています。

私は、この失速の背景には「急ごしらえの市場設計」という構造的な欠陥があると考えています。取引高も初日の5分の1程度に落ち込む日が多く、投資家たちの不満は、上場企業の「質」そのものに向けられています。財務内容の不透明さが浮き彫りになっているのです。

例えば、2019年11月7日に部材メーカーの容百科技が開示した「巨額の売掛金回収遅延」は市場に衝撃を与えました。上場直後に特別損失を計上する事態は、審査体制の甘さを露呈したと言わざるを得ません。これでは投資家が不信感を抱くのも無理はないでしょう。

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有力企業が本土を避け、海外市場を目指す真の理由

中国が「改革開放」という市場経済の導入に舵を切ってから約40年が経ちます。しかし、アリババやテンセントといった真の実力派企業は、中国本土ではなくニューヨークや香港を上場の場に選んできました。この傾向は、現在の新興スタートアップでも変わりません。

無人コンビニ技術を開発する有望な企業なども、最初から海外上場を視野に入れています。なぜなら、米国や香港であれば国際通貨であるドルを直接調達でき、さらにテック企業を正当に評価できるプロの投資家が揃っているからです。

一方の本土市場は、中国当局の強い影響下にあります。調達できるのは海外送金に制限がある「人民元」のみという点も、グローバル展開を狙う企業には大きな足かせとなります。自由な資本移動が制限されたままでは、本土市場の魅力は高まらないでしょう。

さらに驚くべきは、マカオに人民元建ての証券取引所を設立しようとする構想です。これは「一国二制度」を前提とした香港の金融機能に対する直接的な圧力とも受け取れます。こうした政治主導の市場再編は、かえって香港の警戒心を強める結果となっています。

私は、真の金融センターとは政治の力で作るものではなく、自由と信頼の積み重ねで育つものだと確信しています。出資規制をいくら緩和しても、為替管理などの抜本的な自由化を避けている限り、中国の市場開放は中途半端な成果に終わるのではないでしょうか。

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