2019年12月19日、日本のスポーツビジネス界を牽引する一人の男性の軌跡に注目が集まっています。コンサルティング業界からプロ野球界へ、そしてバスケットボール界へと舞台を移した葦原一正氏です。
かつて日本の男子バスケ界は、企業チーム主体のリーグとプロチーム中心のリーグが並立し、泥沼の分裂状態にありました。この事態を重く見た国際バスケットボール連盟(FIBA)は、日本に対し国際試合への出場禁止という、あまりに過酷な制裁を下したのです。
この絶望的な状況を打破すべく現れたのが、日本サッカー界の伝説、川淵三郎氏でした。葦原氏は2015年06月、新リーグ創設という「ミッション・インポッシブル」に挑むべく、川淵氏の元へ集結したのです。
無謀な「20億円」のハードルを越えた、あふれる情熱と戦略
当時、事務局長に就任した葦原氏に突きつけられた川淵氏からの至上命題は、「開幕初年度に20億円を稼げ」というものでした。前身リーグの売上合計がわずか4億円だったことを考えれば、それはあまりに無謀な5倍の目標値です。
さらに準備期間は約1年。これはJリーグ設立時の5分の1という、殺人的なスケジュールでした。SNSでは「本当に開幕できるのか?」と不安視する声もありましたが、葦原氏は「バスケの持つ潜在能力」を信じ、必死の営業活動を展開します。
世界一の競技人口を誇り、国内でもサッカーに次ぐ登録者数を有するバスケ。特に男女比がほぼ半々という点は、大きなビジネスチャンスでした。また、天候に左右されず稼働率を高められる「アリーナスポーツ」としての強みを愚直に説き続けました。
その結果、スタッフの奮闘も相まって、初年度の売上は目標を大幅に上回る約50億円に到達したのです。不可能を可能にしたこの実績は、日本のスポーツ界に大きな衝撃を与えました。
「べき論」が導く組織の調和と、人心を掴むリーダーの条件
葦原氏が組織運営で最も大切にしているのが「べき論ファースト」という考え方です。これは、利害関係者(ステークホルダー)との調整において、「できるか否か」ではなく「どうあるべきか」という理想をルール作りの基準にする手法です。
B1・B2合わせて36チームが存在すれば、当然意見は対立します。そこで声の大きい意見に流されるのではなく、全体の未来を見据えた原理原則を貫くこと。これこそが、組織をブレさせないための鉄則だと彼は説きます。
こうした「当たり前のことを当たり前にやる」姿勢こそが、近年の八村塁選手の活躍などによるバスケ熱を支える基盤となったのでしょう。そして、その背中を押したのは、川淵氏の持つ圧倒的な「人たらし力」でした。
「わかった」「ありがとう」「困ったらオレに言え」。このシンプルながらも深い信頼を感じさせる言葉が、スタッフの心を動かしてきました。私自身、このエピソードから、真のリーダーとは論理的なビジョンと人間味あふれる包容力を併せ持つべきだと痛感します。
2019年12月19日現在、葦原氏は日本バスケットボール協会の理事として、さらなる高みを目指しています。出会った恩師たちの教えを胸に、彼の挑戦は止まることを知りません。
コメント