日本の製造業を支える「金属の王様」アルミニウムの調達価格に、大きな地殻変動が起きています。英豪資源大手のリオ・ティントをはじめとする海外サプライヤーと日本の需要家との間で続けられてきた、2020年1月から3月期におけるアルミ地金の割増金(プレミアム)交渉が、大幅な値下げで合意に至りました。決定した価格は1トンあたり83ドル。これは前四半期と比較して約14%もの下落となり、2016年10月から12月期以来、およそ3年ぶりという異例の低水準を記録しています。
そもそも「プレミアム」とは、国際的な指標となるロンドン金属取引所(LME)の価格に、運賃や手数料、地域の需給バランスを加味して上乗せされる調整金のことを指します。いわば、現物アルミを確保するための「上乗せ手数料」のような存在です。今回の交渉当初、売り手側は90ドル台を提示していましたが、買い手側である国内商社やメーカーの反応は冷ややかでした。SNSなどでも「これほど需要が冷え込んでいるのに強気すぎる」といった声が上がっており、結果的に市場の実態を反映した大幅な値下げを勝ち取った形です。
自動車と半導体の失速が招いた需給の緩み
価格急落の背景には、日本の基幹産業である自動車と半導体分野での深刻な需要停滞があります。世界的な新車販売の落ち込みに伴い、部品に使用される高付加価値アルミ製品(VAP)の引き合いが極端に減少しました。また、半導体製造装置向けのアルミ圧延品も、2019年1月から10月までの累計生産量が前年同期比で34%もマイナスとなるなど、惨愄たる状況が続いています。株式市場では半導体関連の回復を期待する楽観論も見られますが、現場のメーカーからは「期待感は皆無だ」という切実な声が漏れてくるほどです。
供給面でもダブつきが目立ち始めています。丸紅のデータによると、2019年10月末時点の国内港湾在庫は31万トンを超え、適正水準とされる25万トンを大幅に上回りました。行き場を失ったアルミ地金が港に積み上がる現状は、まさに供給過剰の象徴と言えるでしょう。編集者としての視点で見れば、今回の値下げは製造コストの低減という側面はあるものの、それ以上に「モノが売れない」という実体経済の冷え込みを強く印象づけるものであり、手放しでは喜べない不気味なシグナルだと感じざるを得ません。
例年であれば、夏場の飲料缶需要に向けて春先からは価格が上昇に転じる傾向にあります。しかし、現状のあまりに低い景況感を踏まえると、次の四半期でも心理的な節目である100ドル台を回復するのは容易ではないでしょう。半導体や自動車という二大巨頭の復活が、アルミ市場の、ひいては日本経済の活気を取り戻すための絶対条件となりそうです。2019年12月26日の今日、私たちはこの低価格決着を「コスト安」と捉えるか、「不況の足音」と捉えるか、極めて重要な岐路に立たされています。
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