井上ひさしが愛した中村哲医師の志。山形・遅筆堂文庫で魂の共鳴に触れる追悼展が開催

2019年12月30日、山形県川西町にある「遅筆堂文庫」にて、アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲医師を偲ぶ特別な追悼展が開催されています。ここは劇作家の故・井上ひさし氏が寄贈した約14万冊の膨大な蔵書を収める場所です。今回の展示では、井上氏が自らの手で読み込み、深い敬意を抱いていた中村医師の著書が公開されており、訪れる人々に静かな感動を与えています。

SNS上では、この二人の巨星の繋がりに驚く声や、井上氏の書き込みを通して中村医師の信念を再確認したいという声が広がっています。「誰も行かぬから我々が行く」という中村医師の言葉に、井上氏が力強く引いたマーカーの跡は、まさに二人の魂が共鳴した証拠と言えるでしょう。一見すると分野の異なる二人ですが、その根底には人道支援への熱い情熱と、生命に対する深い慈しみという共通項が流れているのです。

展示の目玉は、井上氏がページの端を折るなどして丹念に読破した計7冊の著書です。中には、アフガニスタンの厳しい現実に立ち向かった記録である「医者 井戸を掘る」も含まれています。さらに、井上氏が中村医師について熱弁を振るった貴重な講演録も展示されており、当時の熱量が伝わってきます。専門的なNGO活動の記録であっても、井上氏の視点を通すことで、私たちに寄り添う物語として響いてくるはずです。

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「水と土の文化」で見守る生命の尊さ

井上ひさし氏は中村医師の活動に深く感銘を受け、現地代表を務めるNGO団体「ペシャワール会」に即座に入会しました。NGOとは「非政府組織」を指し、政府の影響を受けずに国際的な課題に取り組む市民団体のことです。井上氏は中村医師を鎌倉市の講演会へ招待するなど、公私共に深い親交を築いていました。それは単なる知人関係を超え、互いの信念を支え合う「同志」のような絆だったのかもしれません。

遅筆堂文庫で長年続けられてきた「生活者大学校」という勉強会でも、その絆は色濃く反映されています。井上氏が校長を務めたこの会では、「水と土の文化」や「農村から生命を考える」といった、中村医師の活動と直結するテーマが議論されてきました。中村医師は、病を治すには医療だけでなく、清潔な水と食糧を育む土壌が不可欠だと説きました。その思想は、井上氏が描いてきた人間賛歌の物語とも見事に合致しています。

井上氏の妻であるユリさんは、夫が中村医師の人柄や自由な発想に心底惚れ込んでいたと語ります。残念ながら山形での講演は実現しませんでしたが、二人の対談を収録した「ほんとうのアフガニスタン」という書籍には、彼らが目指した平和への道筋が刻まれています。この展示は2020年2月2日まで開催されています。一人の編集者として思うのは、言葉と行動で世界を変えようとした二人の精神こそ、今の時代に最も必要な灯火であるということです。

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