2019年12月30日、日本の経済格差が深刻な局面を迎えています。1980年代以降、先進国全体で所得格差が広がるなか、特に日本では20代から30代の現役世代において、再分配機能が十分に働かないことによる格差拡大が顕著です。SNS上でも「一生懸命働いても生活が楽にならない」「将来への希望が持てない」といった悲痛な声が溢れており、事態は一刻を争う状況にあるといえるでしょう。
これまで格差是正の切り札とされてきたのが「最低賃金の引き上げ」です。確かに、時給の底上げは賃金格差を縮める効果を発揮します。しかし、ここで注意が必要なのは「賃金の低さ」と「世帯の貧困」は必ずしも一致しないという点です。例えば、実家暮らしの学生アルバイトが低賃金で働いていても、世帯全体で見れば貧困ではないケースも多いのです。
なぜ「最低賃金」だけでは不十分なのか
貧困対策としての最低賃金には、構造的な限界が存在します。実は、フランスの専門家委員会も「最低賃金の引き上げは貧困対策として有効ではない」と警鐘を鳴らしているのです。貧困世帯の多くは、そもそも十分な労働時間を確保できない不安定な雇用環境にあります。そのため、時給が数パーセント上がったとしても、可処分所得(税金などを引いた後の自由に使えるお金)への影響はごくわずかに留まってしまいます。
そこで注目されるのが「給付付き税額控除」という、いわゆる「負の所得税」の考え方です。これは、所得が一定ラインを下回る世帯に対し、税金を徴収する代わりに現金を給付する画期的な仕組みです。しかし、先行して導入したイギリスでは、所得の変動を正確に把握できず、過剰に給付した分を後から返還請求するといったトラブルが相次ぎました。
現在の日本のように、副業やフリーランスといった多様な働き方が広がる社会では、個人の所得をリアルタイムで正確に捉えることは極めて困難です。毎月の収入をチェックして現金を配るシステムには膨大なコストがかかるだけでなく、資産の把握まで含めると公平性を保つのは至難の業でしょう。私は、この「現金給付の限界」を直視すべきだと考えています。
現役世代を支える「サービス給付」への転換
2019年現在、日本の社会保障は高齢世代に手厚く、現役世代への支援が手薄な「シルバー民主主義」的な側面が否定できません。特に住宅費の補助制度が乏しく、高等教育の自己負担が重いことは、若者の貧困を固定化させる大きな要因です。かつての「年功序列で給料が上がる」という前提が崩れた今、個人の賃金だけで子育てや住宅、教育のすべてを賄うのはもはや不可能です。
これからの貧困対策の核となるべきは、現金ではなく「サービス給付」の保障です。育児、住宅、医療、そして教育。これらを社会全体で負担し、誰もがアクセスできる環境を整えることが重要でしょう。例えば、保育サービスが確実に利用できれば、親は就労を断念せずに済みます。私は、ライフイベントごとの負担を軽減することこそが、少子化を食い止める唯一の道だと確信しています。
現役世代の貧困は、社会の土台を揺るがす深刻な問題です。2019年12月30日というこの時期に、私たちは「賃金で生活のすべてを支える」という古いモデルからの脱却を決断しなければなりません。次世代が健やかに育ち、誰もが将来に見通しを持てる持続可能な社会を築くために、教育の機会均等や住宅政策の抜本的な見直しが、今まさに求められているのです。
コメント